文字 

(9)妊娠とリスク評価 自分でもチェックし管理 岡山大産科・婦人科学教授 平松 祐司

%%SPc2012040211450532_1.pdf%%EP

 元気な赤ちゃんを産むためには、合併症の起こりやすい状態にあるかどうか自分でもリスク評価する必要があります。リスク因子が多い場合は、専門医の指導により高次医療施設で健診を受けることを勧めます。妊娠したら別表でリスクを確かめ、自己管理を心掛けることも重要です。

 高齢妊婦では妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、子宮筋腫、分娩(ぶんべん)時の産道強靭(きょうじん)症、胎児の染色体異常などの頻度が増します。このため、35歳以上の人には妊娠16〜17週ごろの羊水染色体検査をお話ししています。やせの人は胎児発育不全、肥満では巨大児、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、難産になりやすくなります。喫煙も胎児発育不全を起こし、アルコールの過剰摂取も赤ちゃんへ影響を及ぼしますので、妊娠前からやめる努力が必要です。

 習慣流産、早産あるいは子宮頸部(けいぶ)円錐(えんすい)切除術既往のある人では、流・早産のリスクが高くなります。専門医の指示に従い、服薬、頻回の健診、子宮頸管縫縮術などが必要になるかもしれません。

 経産婦で妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、常位胎盤早期剥離の既往がある人は、繰り返す可能性がありますので、食事等に注意してください。巨大児、肩甲難産、低出生体重児も繰り返す可能性が高くなります。児の大きさは健診時に超音波計測で分かりますので、参考にしましょう。

 妊娠初期の超音波検査では児の状態とともに、子宮筋腫や卵巣腫瘍の有無もチェックし、これらがあるとリスクが高くなります。子宮筋腫については本シリーズ4回目(1月16日付メディカ参照)に解説しました。卵巣腫瘍がある場合は、良性か悪性か判断してもらう必要があります。

 妊娠中期からは児の大きさと同時に、胎盤の位置、子宮入り口の頸管の長さなどもチェックします。前置胎盤、低置胎盤のときには出血に注意します。頸管長が短くなったら、早産に注意し安静を心掛けましょう。

 妊娠末期には、児の大きさだけでなく向き、羊水量なども調べます。逆子や赤ちゃんが横向きの横位(おうい)のときは矯正のための体操をし、直らない場合は帝王切開も考慮します。羊水過多、過少のときは赤ちゃんに異常があることがあるため精密検査が必要です。

 分娩予定日を1週間過ぎても陣痛が来ない場合、分娩時に胎児心拍の低下などが起こりやすくなるため、赤ちゃんの健康状態を超音波検査や胎児心拍数モニタリングなどで調べながら厳重に管理していくことが必要です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月02日 更新)

タグ: 女性お産岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ