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スーダンでの経験 岡山済生会総合病院 名誉院長 糸島達也

 思い出深い国はスーダンです。私は1987年、スーダンの首都ハルツームにある日本が寄贈したイブンシナ病院に1カ月弱滞在しました。病院設立を主導した岡山大医学部から、第2次専門家チーム6人の一員として派遣され、肝疾患の研修指導を行ったのです。

 同病院は消化器、泌尿器、耳鼻科の専門教育病院で、日本の病院と遜色ない立派な施設を有し、診療時間は朝8時から午後2時までの6時間でした。午後は午睡が必要なほど暑いとはいえ、労働時間が短く、一日をゆったりと過ごしている点では、どちらが先進国かと考えさせられました。

 スーダン人は、日本人に比べ10センチほど身長が高くて堂々とし、人情に厚く、私たちが失いつつあるものを持っていたように思います。また、スーダンの民謡は5音音階だったため、まるで日本の民謡を聞いているようだったと記憶しています。

 チームは、スーダンでも第一級の医者がそろった現地スタッフに大歓迎され、よく自宅に招かれました。全員と握手する習慣を通して、信頼を培ったように思います。

 私の生涯にわたって役立ったスーダンでの経験は、一国のトップの人はどんな人をも心温かく迎え、片言の英会話でもお客に堅苦しい思いをさせないということでした。その経験を生かし、私もどんな人も受け入れられるよう、温かく接する努力をしてきました。

 イブンシナ病院との正式な交流は内戦により途絶えていますが、岡山済生会総合病院ではスーダンから医師や看護師の受け入れを続けています。

(2011年4月7日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年04月07日 更新)

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