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白衣を脱いだ医師 岡山赤十字病院 院長 忠田正樹

 「忠田」の姓は珍しいと言われることが多い。もちろん私自身もそう思っている。しかしながら先日、ある公的な会議で偶然にも同じ姓で、同世代の方にお会いする機会があった。初対面だったが、なぜか他人とは思えない気持ちになった。

 さて話を変えて。私事だが、2年前の4月に岡山赤十字病院の院長を拝命した。その時、思い切って外来を含めたすべての診療行為から身を引くことにした。山積する院内の懸案事項の解決を最優先しようと考えたからである。

 医師になって40年。病院勤務医として毎日、診療に明け暮れてきた。このような臨床医が急に診療をやめることになり、通院中の患者さんをはじめ、多くの方々に迷惑をかけてしまった。しかし、診療を続けながら大病院の管理運営を行っていくほどの能力を持ち合わせていないので、やむを得ない選択だったと自分を納得させている。

 医師仲間からは「診療をしないと寂しいだろう」「せめて一日だけでも外来をすれば」などと言われた。確かに、せっかく苦労して取得した専門医や指導医の資格を返上し、臨床の現場から離れるのは少々、覚悟が必要だった。だが、40年間、臨床医として大過なく過ごせたことに、今はホッとしている。それほど医療行為は責任が重く、リスクがあり、緊張を強いられる仕事であった。

 では、今はのんびりしているのか?と思われるかもしれないが、決してそうではない。「白衣を脱いだ医師」として、何を考えているのか―。

(2012年4月3日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月03日 更新)

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