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フランスの医療 光生病院 理事長兼院長 佐能量雄

 パリには、パリ大学のキャリー教授が自ら率い世界一と自負する救急医療体制SAMUがある。

 救急統制台に複数の医師が常駐して、救急要請の電話を直接受け、患者の容体によっては救急車にそのまま乗り込みドクターカーとして現場に急行、処置をしながら搬送する。残った医師が心筋梗塞や脳梗塞に対応できる病院の医師やベッドの空き状況をチェックし、重症度に応じた病院に運ぶという究極のシステムだ。キャリー教授によれば、ニューヨークの米国型ERと心筋梗塞患者の搬送時間を比較し、世界一の救急システムであることを証明したそうだ。

 もう一つ、フランスには在宅入院システムという日本にも役立ちそうな制度がある。小さなオフィスに退官後の医師や看護師が駐在し、訪問看護師やヘルパーを派遣して在宅医療や訪問看護をコントロールするものだ。糖尿病、がんの化学療法、経管栄養、感染症など、かなり重症度の高い症例にも対応している。

 週1回かかりつけ医の往診があり、看護師は必要に応じて1日3回毎日訪問することもあれば、2日に1回で看護助手のこともある。急変時はSAMUやかかりつけ医に連絡するというシステムだ。質と効率を担保するため、在院日数が短くなれば診療単価が上がるそうだ。フランスは、やはり一味も二味も違う。

 昨年の福島第1原発事故後も、原発のコントロールでは世界一であることを宣言し、まるでEU(欧州連合)中に電気を輸出する勢いであった。子育てでも減税どころか多額の子育て手当を支給して、出生率を上げ人口増加に成功している。世界一のワインコレクションや高級ファッションだけでなく、見事に世界に誇るフランス文化を繁栄させている。

 ワインやフランス料理を楽しむ文化には、酒や焼酎をたしなみ、美しく飾られた日本料理を味わう日本人と共通する感性も多い。日本はぜひとも、フランスから多くを学んでほしいところである。

(2012年3月15日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年03月15日 更新)

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