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オランダで感じたこと 岡山済生会総合病院名誉院長 糸島達也

 今から30年近く前、オランダの田舎町で開催された肝臓の「クッパー細胞シンポジウム」に参加しました。6日間のシンポジウムは肝臓の特殊な分野を多方面から研究する専門家ばかりで、約100人が合宿形式で過ごしました。日本からは十数人が参加したのですが、1週間を一緒に過ごすとその後も年齢を超えて心のつながりができました。

 歴史上、オランダが世界経済の覇権を握り、日本に来たのは17世紀。海上帝国としての全盛期で、世界の富が首都アムステルダムに流れ込みました。このころ、オランダで芸術や科学が発展しました。絵画でレンブラントが活躍し、望遠鏡や振り子時計などが発明された時代です。ライデン大学の博物館を訪れ、教科書で見たことのあるレーベンフックの顕微鏡、望遠鏡、天球儀、ニュートン力学関係、外科の手術用器具など当時の最新機器が展示されているのを見た時は感動しました。

 アムステルダムのれんがの街並みは4階建ての個性を持った建物が連なり、数百年にわたって使用され続けています。寒い国でも熱効率が良く、家具も立派で代々に受け継がれています。郊外には牛と羊がたくさん放牧されており、チーズなど食べるものには困りません。町にはいろいろな若者が語り合って、お昼にはオランダのサンドイッチ「ブローチェ」をおいしく食べていました。日本も食料が十分に自給できる体制が必要です。

 今回の東日本大震災の復興にはオランダの4階建てのように、代々住めるしっかりした集合住宅や、ヨーロッパの 城塞(じょうさい)型の町のように、自然災害にも強く集まった住居群が、高齢者の多い日本では効率的ではないでしょうか。私たちは耐用年数が短く、使い捨ての多い現代文化を見直し、耐用年数の長い“もったいない”の文化に復元することが必要だと思います。

(2011年5月12日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年05月12日 更新)

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