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血液幹細胞で心筋修復 岡山大大学院が開始、国内初 重症治療に期待 

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の草野研吾助教授(循環器内科学)らのグループが、心筋梗塞(こうそく)や狭心症により心臓の筋肉(心筋)が壊死(えし)した患者に、血管を作るもとになる血液中の細胞を移植し、心筋を修復させる国内初の細胞治療を四月にも開始する。十五日、同大倫理委員会で承認された。手術不可能な重症患者の根本的治療につながると期待される。

 グループによると、治療では患者の血液を体外で循環させ、血管を作る幹細胞「血管内皮前駆細胞」を分離して採取。足の付け根から動脈にカテーテルを通し、心臓の内側から傷んだ場所五~十カ所に計約五百万個を移植する。一カ月後、血管の再生状況や運動時に感じる胸の痛み、息苦しさの改善などをみる。

 国内では現在、骨髄幹細胞から血管を作り出す治療が行われているが、今回の手法は血管を作り出す幹細胞だけを高濃度で移植するため、効率よく毛細血管ができ、心筋が修復されるという。

 対象は慢性虚血性心疾患で、バイパス手術や風船を使って血管を拡張させる治療ができなかったり、薬の効果がない重症患者。当面は効果や安全性を確かめる臨床試験として、約十人に対して治療を行う。

 血管再生治療を研究する先端医療センター(神戸市)と共同で実施。草野助教授は既に米国タフツ大で、同じ手法による治療実績があり、効果も実証されているという。

 草野助教授は「骨髄幹細胞を使う方法は、全身麻酔が必要で患者の負担は重い。徐々に今回の手法の対象者を増やし、将来は高度先進医療とし、国の制度で費用の一部を保険でまかなえるようにしたい」と話している。


安全性は高い

 室原豊明名古屋大大学院教授(循環器内科学)の話 血管内皮前駆細胞を使うため効果も十分見込める。細胞も患者自身から採取するため、拒絶反応などもなく安全性は高いだろう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月16日 更新)

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