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高脂血症の治療薬、冠動脈疾患に効果  中村防衛医大名誉教授発表 国内初、大規模試験 発症率が33%減少

身長172センチで身体活動量が低い人を想定した食事療法メニュー。反時計回りに麦ご飯、サワラのはす蒸し、ニンジンのごまあえ、高野豆腐の団子、リンゴ、カボチャの煮物、牛肉の黒コショウ焼き。エネルギーは666キロカロリーに抑えた

臨床試験の結果を分析する中村名誉教授

高脂血症の食事療法について語る加福・管理栄養士

 血液中にコレステロールなどの脂質が増え動脈硬化を起こす高脂血症。その治療薬でコレステロール値を下げるプラバスタチン(商品名メバロチン)で、心筋梗塞(こうそく)など心臓の冠動脈疾患の発症率が33%予防されたとする国内初の大規模臨床試験の結果を中村治雄防衛医大名誉教授らがまとめた。コレステロールをめぐっては「やや高めの方が長生きでき、低いとがんや肝臓病になりやすい」という意見があるが、中村名誉教授は東京でのワークショップで「薬は心臓病以外の病気を含め死亡も減らす可能性があり、がんの増加もなかった」と強調した。

 試験は、冠動脈疾患がなく総コレステロール値が血液一デシリットル当たり二百二十~二百七十ミリグラムの軽・中等度の高脂血症患者約七千八百人(平均年齢五十八歳)を、食事療法単独と食事療法にプラバスタチンを併用したグループに分け、一九九四~二〇〇四年に五年以上追跡調査した。

 その結果、総コレステロール値は食事療法単独で2%、併用は11%それぞれ低下。冠動脈疾患の発症率は併用の場合が食事療法単独に比べ33%少なく「予想を超える抑制効果だった」と中村名誉教授。冠動脈疾患に脳梗塞を加えた動脈硬化性疾患は30%低下。他の病気を含めた総死亡率は28%下がった。

 副作用をみると、肝機能障害と腎機能障害の指標に両グループ間で差はなかった。がんの発生頻度もほぼ同じだった。これを受け、中村名誉教授は「プラバスタチンの併用は極めて安全」と結論づけた。

 実は米国でも一九八〇年代後半に「コレステロール値を下げると寿命が短くなる」と薬物治療を否定する意見があったという。欧米ではコレステロール抑制による心臓病予防効果が既に実証されたが、日本は心臓病の発症率が低いことや、薬の投与量が欧米の半分以下と少ないため、独自の試験が求められていた。

 今回の試験結果は昨年十一月に米心臓協会の集会で発表。中村名誉教授は「出席した研究者から『これでコレステロールウオー(論争)は終結したのではないか』という意見を頂いた」と手応えを語り、今後さらに詳しく分析する考えを示した。


加福・管理栄養士が食事療法解説

エネルギー 適正量守る 肉や卵の取りすぎに注意

 高脂血症治療の基本は食事療法。ワークショップでは、大阪の栄養専門学校教員の加福文子・管理栄養士が理想的な料理を実際に示し、ポイントを解説した。

 加福管理栄養士が挙げたポイントは、食事をそれぞれの人に合った適正エネルギー量にコントロールする▽コレステロールを上げる肉類やバター、卵などの飽和脂肪酸の取りすぎに注意する▽根菜、海藻、キノコ類に多い食物繊維をたっぷり取る―など。さらに、中性脂肪値の高いタイプは炭水化物、特にしょ糖、果糖の取りすぎに注意する。

 適正エネルギー量はそれぞれの標準体重と身体活動に応じ異なる。標準体重は身長を二乗し二十二を掛け求める。一日に必要なエネルギー量は、身体活動が「歩行が一時間程度」「軽作業やデスクワークが中心の生活」という軽い労作で標準体重一キロ当たり二十五~三十キロカロリー。身長が日本人で標準的な一七二センチだと「一・七二メートル×一・七二メートル×二十二×三十キロカロリー」で二千キロカロリー弱となる。

 適正エネルギー量は「歩行は二時間程度」「立ち仕事が中心の生活」の普通の労作で体重一キロ当たり三十~三十五キロカロリー、「重い肉体労働が一時間程度」の重い労作で同三十五キロカロリー以上になる。

 エネルギー量のコントロールには食材選びも重要だ。中でも「肉は部位に注意してほしい」と加福管理栄養士。牛、豚肉の場合、脂なしのもも肉のエネルギー量、脂質はバラ肉の数分の一。「牛肉は赤身がお薦め。豚肉は調理前に脂身を取り除いてほしい」。鶏肉は同じもも肉でも皮を外すとエネルギー量、脂質が半分前後に減り、ささ身はさらにヘルシーという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月21日 更新)

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