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老人性難聴 おおもと病院 名誉院長 山本泰久

 数年前、私は左耳の聴力がなくなった。難聴ではなく聴神経が消失していたのだ。私の最も尊敬する脳神経外科の西本詮(あきら)岡山大名誉教授と神経内科医が、私の脳MRI(磁気共鳴画像装置)画像を精査検討し、左聴神経がなくなっていることが判明した。それで補聴器が役に立たないことがわかった。

 1年ぐらい時々耳鳴りがし、難聴が始まり耳鼻科でお世話になったが、外的には何もなく、MRIでも特に問題はなかった。何の足しにもならないと思いつつ、補聴器の高価なものを買って使用したが、「めまい」がひどくなってやめてしまった。右耳は普通よりやや聴力は落ちるが、静かな部屋では正常に会話ができ聞こえている。

 難聴は高齢者の多くに起こり、ほとんどの人が補聴器を使っている。それに引き換え、眼科の進歩はすばらしいように思える。もっとも白内障は、ある程度症状が進まないと手術まで来ない。進行はゆっくりで、少し雲がかかったように見える状態で一生を過ごす人も少なくない。

 私の考えでは、目は眠った時は完全休養だが、耳は寝ている間も防御機能として働いているため早く疲れるのではないかと思っている。目がよく見える人は早く聴力疲労が来るのでは? 目に関してはブルーベリーとか目薬とかいろいろあるのに、耳に関して民間薬もあまり耳にしないのは耳寄りな話がないのだろうと思っている。

 多くの人が困っているのを解決するのは良医だと思っているのだが、新しい雑音がはいらない補聴器の開発が進められているとか、はたして役に立つだろうかと心配している。

(2011年7月14日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月31日 更新)

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