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To err is human 岡山赤十字病院 院長 忠田正樹

 今回の一日一題の題名は、1999年に米国科学アカデミー医学部会が、米大統領に提出した医療事故報告書のタイトルである。医療界では有名な言葉となり、医療事故の時に限らず、「失敗をするのが人間である」「人間は間違うものである」と理解され、使われている。

 しかし、よく調べてみると、古いイギリスのことわざの一部分で「過ちを犯すのは人間的であり、それを許すのは神的である」と続くという。ヒューマンの部分が形容詞とすれば「人間はミスをするもの」との解釈は間違いではないが、意味するところが少し違ってくるようだ。

 いずれにしても、人は誰しも一生懸命に判断し実行しても、時に間違いを犯してしまうのは避けられない。古来、間違いを未然に防ぐ方法や大きなミスにつながらないような工夫が、さまざまな分野で考えられてきた。

 われわれ医療者にとって、医療行為上の間違いは大小にかかわらず患者の不利益につながる。このため、常日頃から医療の安全には特に留意している。

 一方、われわれ医療者が神経を使うのが、患者側からのクレーム対応。当方に非がある場合に謝るのは当然だ。しかし、特に昨今、思い通りにならないと許せないという傾向が強いせいか、医療者側が理不尽な苦情や非難を受けることも少なくないようだ。

 「間違いを犯すのは人間的である。しかし、それを許すのは神的(神のような行為)である」

 本来、医療とは売り物でもなく、買う物でもない。地域に備えられるべきものである。そうであるならば、医療者はもちろん利用者も、地域の医療体制をもっと大切に扱うべきではないだろうか。

(2012年4月24日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月24日 更新)

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