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口臭なぜ発生 岡山大学病院 森田学副病院長(予防歯科)に聞く

岡山大学病院 森田学副病院長

口臭の発生源となる白い舌苔が付いた舌(上)と清掃後=森田学副病院長提供

 デリケートな問題なため人には直接伝えづらく、自分では気付きにくい口臭。あまり神経質になる必要はないが、エチケットとして爽やかな息を保っていたい。原因、予防法などを、岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)副病院長で同大大学院医歯薬学総合研究科教授(予防歯科学)の森田学氏に聞いた。

メカニズム

 口臭にはニンニク、ネギ、ニラ、アルコール摂取や喫煙といった飲食物・嗜好しこう品による一時的な口臭のほか、生理的口臭、病的口臭などがある。

 生理的口臭は誰にでも生じ、起床直後や空腹時、緊張した時などに強くなる。口の中を洗い流す作用がある唾液が減って乾燥し、細菌が増殖し臭いが出やすくなる。

 病的口臭は糖尿病、肝硬変や鼻、喉、気管支などの病気も関係しているが、原因の約9割は口腔こうくう内にある。歯周病、重度の虫歯、歯し垢こう(プラーク)、唾液分泌の減少、入れ歯の清掃不良などによって引き起こされるのだ。

 主要な原因物質は3種類の硫黄ガス。新陳代謝ではがれた粘膜上皮細胞、白血球といったタンパク質を口の中にすむ嫌気性菌が分解して作る。タンパク質や細菌は主に、舌表面に付着して白いコケ状の「舌苔ぜったい」となり、口臭の発生源となる。

 「3種類のうち硫化水素は舌苔が多い場合に、メチルメルカプタンは歯周病がひどい人から出る。ジメチルサルファイドは鼻や喉などの病気が関係している」と森田副病院長。

 同病院予防歯科は2007年、口臭外来を開設した。呼気を採取し、口臭測定器で3種類の硫黄ガス濃度を調べる検査など実施。口腔内の清掃、歯周病や虫歯治療をし、口臭を改善させる。「口臭外来患者は年間約100人で増加傾向。40代を中心に女性が多いが、口臭がないのにあると思い込んでいる人もいる」という。

予防法

 歯周病や虫歯は、細菌の塊である歯垢が歯の表面や歯肉との間に付着して生じる。口臭予防には普段から歯垢や、舌苔を取り除くことが大切だ。

 歯垢は歯間ブラシやデンタルフロス(糸式ようじ)も活用し、舌苔は舌ブラシやガーゼで除去する。舌ブラシは舌を傷付けないように軽く当て、汚れやすい奥の方から舌先へ動かすとよい。入れ歯を使っているお年寄りらは、毎日の入れ歯の洗浄も欠かせない。

 洗口剤を使うのも手軽な対策。液状やスプレータイプがあり「殺菌と、臭いを中和させる作用を兼ね備え、効果が12~24時間持続する製品もある」と森田副病院長。さらにユニークなのが、パイナップルの摂取。「タンパク質を分解する酵素パパインが含まれ、舌の汚れを溶かし口臭を防いでくれる」そうだ。

 唾液は、病気やストレス、血圧を下げる薬や向精神薬の副作用、加齢などで分泌量が減る。パソコンを長時間黙々と操作▽囲碁・将棋で長考▽飲酒―の後も同様に口は乾き、臭いやすい。時折は、リラックスして会話や水分補給をしたり、ガムをかんだりしよう。

 森田副病院長は「細菌は睡眠中に繁殖する。寝る前には歯や舌を清潔にし、2、3カ月に1度は歯科で専門的な歯の清掃を」と勧める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年06月18日 更新)

タグ: 健康岡山大学病院

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