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母子手帳10年ぶり改訂 岡山でも交付スタート

 妊婦の健康状態や子どもの成長記録を書き留める母子健康手帳の内容が今春、10年ぶりに見直され、岡山県内でも改訂版が渡されだした。父親(夫)の育児参加を促そうと両親で書き込む妊娠中の自由記載欄が拡充され、うんちの色で胆道閉鎖症の有無を見る便色カードも加わった。有効に利用して、妊娠―出産―育児の一大ライフイベントでの頼れる存在にしたい。

 母子保健法に基づく母子健康手帳は市町村が作成。妊婦が妊娠届を出すともらえる。妊娠中の経過や乳幼児健診、予防接種、身体発育といった基本的な記載項目と同様、自由記載欄と便色カードも全国共通。厚生労働省が省令で定めている。

 母子の健康管理で、手帳が果たす役割は大きい。岡山県北部の中堅保健師はカルテに例えて言う。「よそからの引っ越しで健康状況や発育の様子が分からなくともこの1冊があれば把握できます」

折々の思い

 自由記載欄の充実は、改訂の目玉だ。妊娠3~10カ月を1カ月ごとに区切った欄を新たに設け、欄の上側には、新しい家族を迎え入れる気持ちを両親で記すよう勧める一文が添えられている。

 妊娠中は喜びと不安が入り交じる。8月をめどに改訂版の交付を始めたいとする岡山市健康づくり課は「折々の思いを欄に記すことで、子どもを大切に育てようとの思いがより大きくなるのでは」と話す。この欄を使い、妊婦健診で相談したい点を整理しておくのも活用法の一つだ。

3色に注意

 改訂版に入った便色カードは、胆道閉鎖症の発見に役立つ。

 栄養素の消化吸収を助ける胆汁の通り道で肝臓と十二指腸を結ぶ胆管が生まれつき、または、生後すぐに詰まることで起きる。1万人に1人の割合で発症し、放置すると肝硬変となり命にかかわる。治療法は手術だが、時期は生まれてからの日数が短いほど良い。

 カードには、正常な便を表す茶褐色をはじめとする計7色の色見本が、色調順に並ぶ。生後4カ月までの間、子どもの便と比べて、灰色がかった白色や薄い黄色など胆汁が流れていない恐れがある計3色に当てはまるようであれば、すぐに受診するよう促している。

 岡山市を含む全国の一部の自治体は以前から、独自にカードを含めていた。「胆道閉鎖症の子どもを守る会」の廣田元子・岡山支部長は「認知度が高いとは言えない病気だけに全国的導入の意義は大きい。早期発見につなげてほしい」と語る。

コンパクトに

 母子健康手帳には、省令が定めた内容以外に育児情報や日常生活の注意点も載っている。厚労省の作成例を参考に、市町村が内容を決めることができる。

 「おやこ健康手帳」の名で改訂版を春から渡している倉敷市。転落・転倒や誤飲、やけどといった子どもの事故を、巻き込まれやすい月齢・年齢に分けて列挙し、防止策も紹介している。赤ちゃんに母体から栄養を与える妊娠中の女性が食事で気を付けるべき事柄や喫煙の害にも触れた。

 「使いやすさも考えながら育児のポイントをコンパクトにまとめました」と倉敷市健康づくり課。他の市町村のものも含め、岡山県健康推進課は「出産と育児が初めての夫婦には良いスタートブックになるのでは」と母子健康手帳を評している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年07月16日 更新)

タグ: お産

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