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岡山県立内尾センター 精神障害者家族ら運営へ 機能は継続

30年の歴史を振り返った県立内尾センターの閉所式

 岡山県の行革により三月末で廃止される精神障害者の社会復帰施設「県立内尾センター」(岡山市内尾)が、四月一日から県精神障害者家族会連合会(県家連)の運営に生まれ変わる。精神障害者の家族会が自ら福祉サービスを展開するのは全国的にも珍しく、同連合会は「当事者や家族が望む支援のあり方を見つけたい」と話している。

 二十七日には、同センターで閉所式が行われ、歴代の所長、職員、家族会ら約六十人が出席。一九七六年の開所以来、三十年間の歩みをスライドなどで振り返った。

 新施設名は、基幹型地域生活支援センター「ゆう」。三月初めにNPOの法人格を取得した同連合会が県から事業委託を受ける。二〇〇六年度の予算は約六千七百万円。現在改修工事中で、本格的な利用開始は今秋となる。

 内尾センターが担っていた機能は基本的に継続。症状が不安定になった時に一時的に宿泊し休息できる「ホステル事業」(六部屋)、二十四時間体制の電話相談、相談や訪問活動をする地域生活支援センターのほか、新たにグループホームの開設も計画している。

 ただし、医師による診療やデイケア、ナイトケアは廃止。同センターの医師が近くに開業した診療所や他の精神科病院などを利用してもらうことになり、精神障害では欠かせない医療との連携が課題となる。

 また、県精神保健福祉センター(岡山市古京町)が〇五年度から実施している二十四時間対応の包括的支援システム「ACT(アクト)」と協力。入院をできるだけ回避し、地域生活を送れるよう支援を進めていく。

 内尾センターは、精神科病院の隔離収容が社会問題となった一九七〇年代、全国で三カ所造られた社会復帰医療施設の一つ。入院に頼らない地域生活を支えてきたが、〇三年に出された県の第三次行革大綱に廃止の検討が盛り込まれ、利用者の間から「行き場がなくなる」と不安を訴える声が多数寄せられていた。

 同連合会の鵜川克己理事長は「退院後の受け皿づくりが不足し、社会的入院の解消が進まない現実がいまだに続いている。サポートを通して、病気があっても地域で暮らせることを具体的に示していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月28日 更新)

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