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がん治療薬で造血幹細胞増加 再生医療へ応用期待 岡山大病院・片山医師らグループ メカニズムを解明

片山義雄医師

 岡山大病院(岡山市鹿田町)の片山義雄医師(38)=血液・腫瘍(しゅよう)内科=らのグループは、特定のがん治療薬「G―CSF」が、血液細胞のもとになる造血幹細胞を血液中に増やす仕組みを解明した。造血幹細胞は白血病など血液がんの治療には欠かせない細胞だが、血液中にはわずかしか存在せず、増やすメカニズムを明らかにしたことでドナー(提供者)から効率よく採取する手法確立につながることが期待される。米科学誌セルで発表した。

 造血幹細胞は骨や肝臓などへ育つ可能性も指摘されており、効率よく採取して育てることができれば、将来は傷んだ臓器などの再生医療への応用も考えられるという。

 「G―CSF」は通常、がん患者の感染予防などに使われる。ヒトに大量投与すると血液中の造血幹細胞を増やす働きがあるため、血液がん治療で、年間約六百例の血縁者間移植のうち約半数を占める末梢(しょう)血幹細胞移植でドナーに使われている。

 ただ、なぜ薬を投与すると血液中に造血幹細胞が増えるのかは分かっておらず、米マウントサイナイ医科大のポール・フレネット博士の指導で、留学中だった二〇〇〇年から研究を始めた。

 片山医師らは、G―CSFを投与したマウスの骨髄組織を調べ、骨をつくる骨芽細胞の働きが低下していることを発見。骨芽細胞が本来の力を発揮できなくなることで、一緒にいる造血幹細胞もとどまれなくなり、骨髄から血中に流れ出すことを突き止めた。

 G―CSFが交感神経を刺激し、ここから放出される神経伝達物質が骨芽細胞の抑制に働いているとみられる。神経伝達物質が出ない遺伝子操作マウスにG―CSFを投与しても、造血幹細胞は血液中に増えなかった。

 片山医師は「これまでメカニズムがはっきりしないのに、十年以上も薬を使い続けているのが実態だった。ドナーの負担軽減につながるようさらに研究を続けたい」と話している。


画期的な研究

 須田年生慶応義塾大教授(幹細胞生物学)の話 可能性が指摘されていた現象を実際に証明した画期的な研究だ。造血幹細胞自体まだ分かっていないことも多く、その機構解明や再生医療への応用も期待できるだろう。


ズーム

 末梢血幹細胞移植 白血病など血液がん患者らの骨髄移植に代わる治療法。ドナーから血液中の幹細胞を含んだ細胞集団を採取し、大量の抗がん剤や放射線で治療した患者に点滴で注入する。全身麻酔を必要とせず、骨髄移植よりドナーの負担が軽いのが特徴。採取前に造血幹細胞を血液中に増やすG―CSFを4、5日間連続で投与し、その際、骨痛や発熱、頭痛などの副作用が懸念される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月31日 更新)

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