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「仕事と子育て両立支援」推進法1年 二の足踏む中小企業  厳しい経営 計画提出0.1%

事業所内保育所で保育士と遊ぶ子どもたち。企業の子育て支援策充実が求められている=岡山県瀬戸町

 仕事と子育ての両立を支援する「次世代育成支援対策推進法」が昨年四月施行され一年が過ぎた。次世代法では、三百一人以上の企業に支援策を盛り込んだ行動計画の策定・提出を義務付け、岡山、広島、香川県内の対象企業は99%が提出。しかし、努力義務となった三百人以下の企業は0・1%程度にとどまっている。背景には厳しい経営状況の中、社員の子育て支援までは目が向かない中小企業の事情がある。

 岡山県瀬戸町にあるアパレルメーカー「岡山ビューティ」。社屋北側にある保育所では、約十人の子どもが保育士のエレクトーンに合わせ歌を楽しむ。一九五三年創業の同社は従業員約百八十人のほとんどを女性が占め、従業員の要望もあり八五年に事業所内保育所を開所。二〇〇四年には出産、育児、介護支援への手厚い社内制度が評価され、岡山労働局から従業員に優しい「ファミリー・フレンドリー企業」の局長賞を受賞した。

 東和子総務担当リーダーは「働く社員に会社の魅力を感じてもらうためにも、仕事と家庭の両立につながる支援策は重要」と話す。

 だが、同社のような中小企業はまれ。各労働局のまとめでは、岡山、広島、香川の三百人以下の企業(約七万社)のうち、行動計画の提出済みは岡山三十三社、広島五十社、香川二十一社の計百四社(全体の約0・1%)しかない。

 未提出で、従業員約五十人を抱える岡山市の製造業経営者は「策定したい思いはあるが、今でも経営はぎりぎり。子育て支援策まで踏み込めない」と説明。計画実行に伴う経費や育休中の人員補充など、負担増を無視できないという。

 倉敷市立短大保育学科の秋川陽一教授(保育学)は「次世代法が目標とする子育て支援策が成功するかどうかは、中小企業の参加にかかっているが、行動計画策定のメリットが見えないのも事実。各自治体が財政的援助を含めた公的補助を進めるべきだ」と指摘する。

 これに対し、三県の従業員三百一人以上の企業(五百四十八社)は順調に行動計画を提出。岡山百六十二、広島二百九十、香川九十一の計五百四十三社と、全体の99%に達した。

 中国銀行(岡山市丸の内)は、導入済みの三歳以下の子どものいる従業員が保育園の送迎などで出勤時間を遅らせることのできる「時差出勤」を、四月から対象を小学校入学前まで拡大。天満屋(同市表町)は契約社員の育児休暇取得日数(最長二年)を正社員と同じに引き上げた。

 両備運輸(同市番町)は出産、育児を理由に退職した女性社員を再雇用する制度を本年度から実施する予定。「新人を一から教育するより、即戦力の人材確保につながるはず」とし、子育て支援策が“一石二鳥”になると強調する。

 しかし、岡山県経営者協会が昨年十一月にまとめたアンケート(三百一人以上の四十四社、三百人以下の四十四社)では、次世代育成支援を進める上での問題点として、64%が「人員に余裕がない」、28%が「他の従業員の理解が得られない」などと回答。各社の計画が実効あるものになるかは不透明だ。

 岡山労働局雇用均等室は「事業主は優秀な従業員の確保のためにも、十年先を見据えた企業戦略ととらえ、企業の規模に関係なく行動計画に取り組んでほしい」と話している。


ズーム

 次世代育成支援対策推進法 国の少子化対策の柱として昨年4月1日、施行。301人以上の企業は行動計画に「出産や子育てによる退職者の再雇用制度の実施」や「出産時の父親の休暇取得の促進」などの子育て支援策を定め、労働局への提出が義務づけられた。達成すれば広告などで「認定マーク」の使用が認められる。罰則規定はない。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年04月02日 更新)

タグ: 福祉子供

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