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人工筋肉でリハビリ 岡山大大学院など臨床試験

脚用の器具を装着し、歩行のリハビリに取り組む男性=岡山大病院

 岡山大大学院、同大病院などのチームが、コンピューター制御の「人工筋肉」を用いたリハビリ器具の臨床試験を進めている。「自ら体を動かす実感がある」と手足の不自由な患者に好評で、コストダウンによって在宅リハビリでの実用化を目指す。

 同大学院自然科学研究科の則次俊郎教授(ロボット工学)、同大病院総合リハビリテーション部の千田益生教授、橋本義肢製作(岡山市)、ソフト開発のコスモ情報システム(玉野市)のチーム。脳疾患の影響で手足にまひのある患者3人の協力を得て、昨夏から月1回実施している。

 物をつかむ動きを助ける「手用」と、歩行を補う「脚用」の2種類。空気圧で伸縮するゴム製の人工筋肉を数本使い、関節の曲げ伸ばしを助ける。コンピューター制御により、手用は「握る」「開く」など患者の声で親指、人さし指、中指の動きを指示。脚用は接地した足裏のセンサーが反応して体重を支え、円滑な歩行につなげる。

 臨床試験では患者の声を取り入れ、人工筋肉に空気を送り込むタイミングを調整したり、装着時の違和感を減らすため装具の形状を工夫。マイクによる音声入力の精度も高めている。

 脳腫瘍の後遺症で左半身にまひがある20代女性は「手を自分で動かす感覚がうれしく、積極的にリハビリができそう」。運動機能が衰える脊髄小脳変性症のため、車いすを使う60代男性は「自然に脚が前へ出る感覚がよみがえった」と明かす。

 則次教授の研究室が千田教授らの意見を取り入れ、10年がかりで開発した。製作費は各50万円程度。千田教授は「装着を容易にして自宅で使えるようにすれば、早期自立などの効果が期待できる」とし、則次教授は「メーカーの協力を得て5年以内に、安価でより使いやすいものを実用化したい」と意気込んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月16日 更新)

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