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(上)岡山済生会総合病院 眼科主任医長 成田亜希子

 なりた・あきこ 岡山芳泉高、鳥取大医学部、同大学院卒。医学博士。岡山大学病院、社会保険栗林病院、福山市民病院、三豊総合病院などを経て、2007年から岡山済生会総合病院眼科医長、2011年から現職。日本眼科学会専門医。

 緑内障は、視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気です。実際に視野障害が起きていても、無意識のうちに、両方の目で補い合ったり、見えなくなった部分を周囲がカバーしたりして物を見ているため、自分では気付かないことが多く、さらに、視野欠損が中心に及ばない限り視力は低下しないので、病気の発見が遅れることも少なくありません。

緑内障の頻度

 日本緑内障学会が平成12年9月から平成13年10月にかけて行った大規模な疫学調査(日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査)=グラフ参照=では、40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障であり、年齢とともに増加し、70歳以上では10人に1人と報告されています。また、この調査で、約9割の緑内障患者が未発見のまま放置されていることが明らかとなりました。

原因

 緑内障は、主に眼圧(目の中の圧力)の上昇により視神経が圧迫されるために起こります。眼圧は、毛様体という組織で作られる「房水」という液体が目の中を循環することで一定に保たれています。房水は虹彩の裏を通って隅角(房水の排出口)に達し、多くは線維柱帯(フィルター状組織)を通ってシュレム管から排出され、眼球の外の血管へ流れていきます。緑内障になると、房水がうまく排出されず、眼圧が高くなります。

種類

 緑内障にはいくつかの種類があります。眼圧が高くなる原因によって、主に「原発緑内障」「続発緑内障」「発達緑内障」に分けられます。

 原発緑内障はさらに2種類に分類され、一つは隅角にある線維柱帯が目詰まりして、排出がうまくいかずに眼圧が高くなる「開放隅角緑内障」です。もう一つは、隅角が生まれつき狭い目の人で、加齢とともに水晶体が大きくなり、虹彩が前方に移動して隅角が閉ざされるために眼圧が高くなる「閉塞(へいそく)隅角緑内障」です。閉塞隅角緑内障では、隅角が急にふさがって眼圧が急激に上昇し、急性発作を起こす場合があり、目の痛み、充血、物がかすんで見えるだけでなく、頭痛や吐き気などを伴います。

 続発緑内障は他の眼疾患や薬物使用などが原因となって眼圧が上昇する緑内障で、発達緑内障は胎内での目の発達が十分でないために起こる緑内障です。

眼圧が正常な緑内障

 疫学調査の結果、眼圧が正常範囲にもかかわらず視神経が障害される「正常眼圧緑内障」とよばれる緑内障が多いことがわかりました。実は日本人の緑内障の約7割が正常眼圧緑内障です。視神経が圧力に対して強いか弱いかには個人差があり、正常眼圧緑内障の人は、視神経が圧力に弱いため正常な眼圧でも視神経が障害されると考えられています。また、眼圧以外の原因として、視神経に栄養を与える血液の循環が悪いために、視神経が障害されるという説もあります。

早期に発見するには

 緑内障はわが国の中途失明原因の第1位です。一度障害された視神経をもとにもどす方法はなく、早期に発見し、治療を開始して病気の進行を抑えることが大切です。緑内障の診断には、眼圧の検査だけでは不十分で、眼底検査で視神経の状態をみる必要があります。40歳を過ぎたら、眼科で検診を受けることをおすすめします。

 次回は緑内障の検査と治療をご紹介します。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月19日 更新)

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