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(4)リハビリ 医師ら監視し運動 再発防ぎQOL向上

心臓リハビリに連携して当たる(左から)吉田医長、山本副院長、湯口主任

 国内の死因ではがんに次ぎ2番目に多く、2011年は約19万5千人が亡くなった心臓病。治療技術の進歩で救命できる症例は広がってきたが、再発や死亡を減らすには「心臓リハビリテーション」が欠かせない。心臓病センター榊原病院(岡山市北区中井町)は、医師らによる監視型運動療法を中心に、患者のQOL(生活の質)向上に努めている。

 運動療法は、心臓機能や体力を向上させる。自律神経機能も改善し、血圧や脈が安定して不整脈が出にくくなる。さらに「血管内皮機能が高まり、動脈硬化や生活習慣病といった心臓病の危険因子を改善させる」と山本桂三副院長(循環器内科)は解説する。

 こうした相乗効果で再発を防ぎ、寿命を延ばす。理学療法士の湯口聡リハビリテーション室主任は「米国では、心筋梗塞後の心臓リハビリにより死亡率が58%、再発率が28%減少したという報告もある」と付言する。

手術翌日に開始

 対象は心筋梗塞、狭心症、慢性心不全、心臓・大動脈の手術後、下肢の閉塞(へいそく)性動脈硬化症の患者。入院から退院までの急性期、退院後から社会復帰までの回復期、その後生涯にわたる維持期に分け、移動や食事など日常生活動作(ADL)の拡大、社会復帰に向けた準備、再発予防を目指したリハビリを続ける=図参照。

 同病院では冠動脈バイパス手術の場合、翌日から集中治療室で立ったり座ったりの訓練を開始。手術2日後、病棟廊下で歩行訓練に入り、次第に距離を延ばす。「かつては安静にする時間が長かったが、離床は早い方が呼吸が改善し、合併症の肺炎や寝たきり予防に有効」と吉田俊伸・循環器内科医長は語る。

最適な内容指導

 術後1週間から心臓に負担をかけず、体内に酸素を十分取り込みながら行う有酸素運動を始める。月〜金曜日に毎日、準備体操を含め約1時間、歩行練習装置「トレッドミル」や自転車型トレーニング器具で体を動かす。

 「主治医と連携しながら、循環器内科医と理学療法士が運動の強度、時間など、各患者に適したリハビリ内容を決め、安全に進めている」と湯口主任。そのため運動の前後で血圧や脈拍を測定し、運動中は患者の体に心電図モニターを装着、医師らが不整脈の有無を監視する。

 退院前には心肺運動負荷試験を行い、患者に最適な運動内容を指導。引き続き外来では、有効性が近年注目されている筋力強化のレジスタンス運動、水中ウオーキングなどを取り入れ、家庭での運動もアドバイスする。

 吉田医長は「重症の人ほどリハビリが大事。当院は運動療法だけでなく、食事療法や服薬指導、病気に伴ううつ症状のケアなどにも当たる」と話す。

筋力強化マシン

 9月に移転開院した同病院内には、旧病院の1・7倍、約750平方メートルのリハビリテーションセンターを整備。温水プール(25メートル×3コース)と運動フロアがあり、最新の筋力強化マシンなどを備える。中庭には、1周200メートルの歩行コースも設けている。

 スタッフは、湯口主任ら日本心臓リハビリテーション学会認定の心臓リハビリ指導士を含む理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の計15人。リハビリ件数は年々増え、11年度は1543件に上った。

 山本副院長は「当院では心筋梗塞で心カテーテル治療をした後、再発例はほとんどなくリハビリ効果は大きい。リハビリ運動を生涯続ければ、長生きにつながる」と推奨する。

 =おわり=
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月03日 更新)

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