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(12)アレルギーって? 倉敷中央病院小児科医長 田中紀子

たなか・のりこ 岐阜高、島根医科大卒。島根県立中央病院、大津赤十字病院を経て2006年から倉敷中央病院小児科。日本小児科学会専門医。アレルギー外来担当。神奈川県立こども医療センターアレルギー科・栗原医師に師事。食物アレルギーの負荷試験も可能(要予約)。

かゆいよう…

 今日も陽一くんは眠れません。体のあちこちがかゆくなるのです。じくじくしたところ、血がでてきたところもあります。幼稚園の先生は、食べ物が原因じゃないかって言うけれど、どうなのでしょう。お母さんは、大きくなれば治るからガマンしようねって言うけれど、どうなのでしょう。

 今日は、森の多くのこどもたちが悩んでいる「アレルギー」について少しだけご紹介します。

 そもそもアレルギーって、いったい何なのでしょう。

 私たちの体には、バイキンなどの敵から体を守る「免疫」という力があります。その免疫が、ホコリ・食べ物・花粉などに必要以上に反応して力を出してしまうことを「アレルギー」といいます。原因は分かっていないことも多く、遺伝・食物・環境などが組み重なって起こると言われています。

 症状もさまざまです。陽一くんのようにかゆくなって湿疹ができる「アトピー性皮膚炎」のほか、気管支がせまくなって息が苦しくなる「気管支ぜんそく」、風邪でもないのに鼻水が続く「アレルギー性鼻炎」などがあります。重くなってくると、毎日の生活に不安やストレスを感じますので、適切な対応が必要です。

 陽一くんは、幼稚園からアレルギーの検査をするようにすすめられ、お母さんと一緒に森の小児科に行くことになりました。先生は「アトピー性皮膚炎です。確かにアレルギーの病気の一つですね。でも、お母さんのお話だと、なにか特定の食べ物に反応しているというわけではなさそうですね。今日は検査はやめておきましょう」と言いました。また、湿疹がひどいときに検査をしても、過剰な結果が出てしまうこともあるみたいです。まずはスキンケアをしっかり行い、それでも治らず食べ物を疑えば検査をしてみるということにしました。

スキンケア

(1)毎日お風呂でキレイに洗いましょう。ゴシゴシこすると傷がつくので、泡立てたせっけんで優しくなでるようにしましょう。熱すぎるとかゆくなるので、少しぬるめのお湯を使います。

(2)水が蒸発するときに皮膚をいためるので、お風呂から出たらすぐにしっかり保湿して、皮膚のバリア機能を守ります。

(3)湿疹になってしまったところは、ステロイドなどのお薬を塗ります。ステロイドには強いものから弱いものまであるので、程度によって変えていきます。皮膚の場所などによってはステロイドが合わないところもあるので、先生とよく相談しましょう。

(4)かゆみが強いときは、お薬を飲むこともあります。

 陽一くんはお母さんにペタペタ塗ってもらい、だんだんとかゆみが取れてキレイになってきました。よく眠れて、楽しく遊べるようになりました。集中力も出てきたようです。最初はお母さんも大変そうだったけれど、良くなってきたら塗るところが減ってきて楽になってきたと言います。時々悪くなったりするけれど、そういうときにはお薬を強くして、良くなったらすぐに減らして、上手に対応できるようになりました。

最後に

 アレルギーはこどもによって差が大きい病気です。悩んでいたら必ず病院で相談してください。こどもの食物アレルギーは克服していけることもあるので、無理な栄養制限はせず、必ず病院で指導を受けてください。気管支ぜんそくの発作はとても苦しいので、調子が悪いときは夜でも病院に行きましょう。しかし、普段から予防の薬をきちんと使って、発作が出ないようにするのが一番です。

 アレルギーの病気を根本的に治すのは難しいですが、上手に付き合って、楽しく過ごせる時間を増やしていきましょうね。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月03日 更新)

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