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(下)岡山済生会総合病院 眼科主任医長 成田亜希子

 今回は緑内障の検査と治療についてお話しします。

検査

 緑内障の診断と治療効果、進行度の判定のため、眼底検査、眼圧測定、隅角検査、視野検査などが必要です。

 まず、緑内障による視神経障害を調べるため、「眼底検査」で視神経乳頭の形状を観察します。視神経乳頭とは、網膜(カメラのフィルムに当たるところ)に分布している約120万本の神経線維が1本に収束している部分のことです。視神経の障害が進むと、神経線維の数が減少し、視神経乳頭のくぼみが拡大、変形するため、視神経から脳に情報が正確に伝わらなくなり、視野が狭くなります。最近では、「コンピューター三次元眼底画像解析法」を用いて、視神経乳頭の形状を調べたり、視神経乳頭周囲の神経線維層の厚みを測定したりすることが可能となりました。神経線維層の厚みの変化は、視神経乳頭の変化や視野の異常に先行して生じる場合が多く、緑内障の早期診断ならびに進行をみる上で有用です。

 「眼圧測定」には、測定器を目の表面に直接当てる方法と、空気を当てる方法があります。眼圧には個人差があり、さらに日内変動や季節変動もあることが知られています。「隅角検査」は、隅角鏡という特殊なレンズを用いて、隅角(房水の排水口)の広さや異常の有無を調べ、緑内障の分類(開放隅角緑内障、閉塞(へいそく)隅角緑内障など)に必要な検査です。「視野検査」は、目を動かさず見えている範囲を測定する検査で、見える部分や見えにくい部分を調べ、それぞれの部位の感度も測定します。

治療

 緑内障治療の目的は、失われた視野をもとに戻すのではなく、視野の欠けるスピードを遅らせることです。現在のところ、失った視野をもとに戻す方法はありません。

 緑内障の種類によって治療法は多少異なりますが、現時点で最も確実な治療法は眼圧を下げることです。治療前に眼圧を数回測定して平均レベルを明らかにし、さらに患者さんの目の状態や年齢を考慮して、「目標眼圧」を設定します。

 眼圧を下げる方法としては、点眼薬を中心とする薬物を用いる治療、レーザー治療、手術があります。まず行われるのは点眼治療で、主に房水(目の中を循環している液体)がよく流れるようにする点眼薬と、房水の産生を抑える点眼薬を用います。通常は点眼薬1種類で治療を開始し、効果が不十分の場合は点眼薬を変更したり追加したりします。その際に、作用の異なる二つの点眼薬が一つになった「配合点眼薬」を使うこともあります。それでも眼圧が目標眼圧に達しない場合や、視野障害が進行する場合は、レーザー治療や手術が行われます。

 レーザー治療には、主に二つの方法があり、適応となる緑内障のタイプが異なります。「レーザー虹彩切開術」は、閉塞隅角緑内障に対する治療で、虹彩にレーザー光を照射して小さな穴を開けることで、房水の流れを改善する方法です。一方、「レーザー線維柱帯形成術」は、開放隅角緑内障に対する治療で、目詰まりしている線維柱帯(フィルター状組織)にレーザー光を照射し、房水の通りをよくする方法ですが、治療後に眼圧が下がっても、次第に効果が失われていくことがあります。

 手術に関しては、眼球壁の一部を切り取って、房水を眼外に流出させるバイパスを作る手術「線維柱帯切除術」、あるいは目詰まりしている線維柱帯の一部を切開して房水の排出をよくする手術「線維柱帯切開術」が主に行われています。さらに、昨年「緑内障インプラント手術」が厚生労働省に認可されました。インプラント手術とは、専用の装置を目に埋め込んで房水のバイパスを作る手術で、ステンレス製の装置を用いる方法と、チューブとプレートを用いる方法があります。従来の手術で十分な効果が得られなかった患者さんにも効果が期待できます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月03日 更新)

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