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(1)紫外線と皮膚―その防御法 岡山済生会総合病院皮膚科 診療部長 荒川謙三

岡山済生会総合病院皮膚科 診療部長 荒川謙三

 これから5回にわたり、皮膚に関連した話題についてお話ししていきたいと思います。まずは、私の専門とする皮膚がんの関連で紫外線についてですが、季節的に合わないことをお許しください。

 私と同世代の人たちは、皮膚が黒いほど健康的だと言われて育ちました。夏休みの終わりごろには、あちこちで“日焼け大会”が行われましたが、昨今では日光に当たってはいけないと言われています。そこで、紫外線とは何か、その皮膚への影響、さらに防御法についてお話しします。

 紫外線(ultra violet:UV)とその作用

 地表に届く太陽光線は、波長の短い方から紫外線(290~400ナノメートル)、可視光線(400~760ナノメートル)、赤外線(760ナノメートル~1・0ミリメートル)と呼ばれます=図参照。さらに紫外線は紫外線B(UVB:290~320ナノメートル)と紫外線A(UVA:320~400ナノメートル)に分けられます。オゾン層が破壊されるとUVBが大量に届くようになり、さらに今までは地上に届いていなかった紫外線C(UVC:10~290ナノメートル)も届くようになります。UVCおよびUVCに近い一部のUVBは皮膚がんを発生させる波長ですので、今後皮膚がんが増加すると考えられます。

 UVB、UVAとも皮膚の老化(光老化)に大きく影響します。弾力線維が変性しコラーゲンが分解されるため、しわが生じてきます。また、メラニン産生にも異常が生じ、シミや脱色ができます。

 「日焼け」は紫外線により生じる反応です。日光を多量に浴び、短時間で赤くひりひりしてくる急性の反応(sunburn:サンバーン)はUVBの作用であり、数日して徐々に茶色になってくる反応(suntan:サンタン)はUVAの作用です。このサンタンは皮膚の防御機構であり、メラニンが増えることで深部に紫外線が入りにくくしているのです。もともと色黒の人は、日光に対して皮膚が強いと言えます。

 紫外線の防御法

 まず洋服、帽子や傘、女性では化粧による物理的な防御を行いましょう。その上でサンスクリーン(日焼け止め剤)を使用してください。今では非常に多くの有用な製品が発売されています。購入する場合の指標となるのが、SPF(sun protection factor)とPA(protection grade of UVA)であり、SPFはUVB、PAはUVAを遮断する強さを表しています。たとえば、SPF10はサンスクリーンを塗布しない場合に20分で皮膚が赤くなる人が、塗布すると10×20=200分で同程度の赤さになることを示しています。現在ではSPFは最高50までの表示になっています。PAは「+」「++」「+++」の3段階表示です。

 日常の使用ではSPF10~20、PA+で良いですが、真夏の日中のレジャーではSPF40~50、PA+++が良いでしょう。色白の人の場合は、メラニンによる防御機能が少ないため表示の多い製品が必要です。使用法の注意点としては、(1)十分な量を塗布する(2)途中で塗り直しをする(3)UVAは、曇り・雨の日も晴れの日と同様に地上に届きますので、油断しない(4)地上からの反射もあり、特に雪面、水面からは空からと同じ量が反射している―などです。

 季節的には、4月から強くなり7、8月がピーク、10月までは強いです。1日の中では、正午をピークに午前10時から午後2時が非常に強い時間帯になりますので、外での行動は注意しましょう。

 幼・小児期にあまり神経質になることはありませんが、サンバーンを繰り返すような急激な日光の当たり方はやめましょう。中・高校生、大学生で活発にクラブ活動を外で行う人、また大半の時間を外で仕事をする人は、サンスクリーンをぜひ使用してください。シミ、しわの少ない老いを迎えたいものです。

 次回は、紫外線が誘因となる皮膚がんについてお話しします。

 あらかわ・けんぞう 徳島城南高、岡山大卒。広島市民病院、住友別子病院、岡山大講師・助教授を経て、1999年川崎病院皮膚科部長・院長補佐。2011年から現職。皮膚科学会専門医、皮膚悪性腫瘍指導専門医。皮膚がんの診断・治療を専門とする。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月19日 更新)

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