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睡眠時無呼吸症候群 岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科 水口一講師に聞く

睡眠時無呼吸症候群の治療法などを語る水口講師

マウスピース装着の一例

 就寝中、呼吸停止を繰り返す睡眠時無呼吸症候群(SAS)。睡眠障害になるため、昼間に強い眠気を招くばかりか、脳・心血管障害、突然死などのリスクを高める。原因や症状、歯科による治療法などについて、岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)クラウンブリッジ補綴(ほてつ)科の水口一(みなくち・はじめ)講師に聞いた。

 SASは、10秒以上続く無呼吸が一晩に30回以上か、1時間に平均5回以上起きることと定義される。呼吸中枢障害が原因の場合もあるが、大半は鼻から喉までの上気道、特に咽頭(鼻腔(びくう)や口腔(こうくう)の奥から食道の入り口までの管状の部分)が狭まって生じる「閉塞(へいそく)型(OSAS)」だ=図上参照

 あおむけに眠ると、舌の根元や軟口蓋(がい)が重力で下がり、咽頭の筋肉も緩んで気道の方に落ち込む。OSASはその上に「加齢に伴う筋力低下、へんとう肥大などが原因となり、特に肥満、顎が小さい人は気道が閉塞しやすい」と水口講師は説明する。

 主な症状は、大きないびき、夜間頻尿、早朝の頭痛、うつなどで、日中も過度の眠気から事故を招く恐れがある。さらに、高血圧や不整脈、心不全、脳梗塞などを引き起こしやすく、命に関わることもある。

 診断は「ポリソムノグラフィー」という睡眠検査で行う。体にセンサーを取り付け、睡眠中の脳波や心電図、眼球の動き、鼻・口からの気流、胸・腹部の呼吸運動、血液中の酸素量、いびき音などを調べ、確定診断する。一方、入院せず、自宅で簡易装置を使って行う検査法もある。

 治療は軽症の場合、生活習慣の改善を図る。肥満の人なら食事療法による減量や、気道確保のため横向きで眠るようにする。「飲酒は上気道の筋肉を緩めるので、寝る前は控える。禁煙や低い枕にすることも勧めたい」

 中等度以上の人には、圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を拡張する「持続陽圧呼吸療法装置(CPAP(シーパップ))」が広く使われている。アデノイドやへんとう肥大が原因なら、口蓋垂、軟口蓋などの切除手術もある。

 歯科の治療法として挙げられるのが口腔内装具(マウスピース)。就寝時に装着すると、下顎や舌が前方位に維持され、気道が確保される=図下参照。「鼻の疾患などでCPAPが使えない人もつけられる。ただし、残存歯数が少ないとか、顎関節に異常のある人は適応できない場合もある」という。

 同補綴科は、耳鼻咽喉科など医科と連携し、OSAS患者に対応している。受診者は増加傾向にあり「当科で口腔内装具を作った人だけでも2012年は約40人に上る」と水口講師。保険診療で作れる樹脂製の装具費は、3割負担で8千〜9千円。より違和感の少ない金属製は、自費診療となり約8万円と高くなる。

 水口講師は「患者調査では、きちんと睡眠がとれ昼間の眠気が少なくなることに加え、いびきが小さくなる、集中力がアップしたなど、口腔内装具による治療効果が出ている」とし「気になる人は専門外来のある医療機関を受診してほしい」と呼び掛ける。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月07日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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