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ノロ集団感染の対策躍起 施設・病院、面会制限や教育徹底

ノロウイルス対策で来所者に消毒を義務付けている旭川敬老園

 年末から全国の福祉施設や病院で、ノロウイルスの集団感染が猛威を振るい、抵抗力が弱い高齢者が相次ぎ死亡した。岡山県内でも、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の警戒水準は最高の「レベル3」を継続中で、大流行の懸念さえある。施設や病院は来所者との面会を制限したり、職員教育を徹底するなど対策に躍起となっている。

 「嘔吐(おうと)物や便を処理した職員が二次感染の発生源になることだけは避けないと…」。110人が生活する特別養護老人ホーム・旭川敬老園(岡山市北区祇園)の森繁樹園長は危機感を募らせる。

 嘔吐物に含まれるウイルスが職員に付着した場合、施設内を移動するうちにまき散らす恐れがあるからだ。入院中の6人が死亡した宮崎県日南市の病院では、嘔吐物を処理した際のエプロンを素手で触れ、すぐに捨てていなかったことが判明した。

 このため、旭川敬老園では、職員がヨーグルトを嘔吐物に見立てた処理方法を実習。使い捨てエプロンと手袋を必ず着用し、靴にはシャワーキャップをかぶせて近づき、拭き取ったティッシュは二重のビニール袋で密閉するよう徹底した。

 昨年オープンした特養の「ライフケアももぞの」(岡山市北区下足守)は迅速に対応できるよう、建物内5カ所にエプロンや消毒液の感染防護キットを常備。「共用すると感染リスクが高い」と洗面所のタオルはペーパータオルに置き換えた。

 特養「桃香の里」(赤磐市熊崎)は、マスクを着用しない面会者の入室を断り、櫛下直子施設長は「注意してもし過ぎることはない」と気を引き締める。各部屋では、次亜塩素酸成分を含んだ液体を自動噴霧器で飛ばし除菌を続ける。

 医療機関も警戒を強める。津山中央病院(津山市川崎)は見舞客がノロウイルスを持ち込む可能性があるとして、病室への面会制限に乗り出した。昨年12月29日から、病院入り口に書面を張り理解を求める。

 県内54医療機関の定点調査によると、感染性胃腸炎の平均患者数は最新データ(12月17〜23日)の1週間が約17人。依然高水準で「集団感染が大変懸念されている」(県健康推進課)。これまで学校の集団感染は岡山、玉野、備前、津山市の5校園、ノロウイルスが原因とみられる集団食中毒は仕出し店、学生寮など5件が報告されている。

 川崎医科大付属川崎病院(岡山市北区中山下)の沖本二郎副院長は「ノロウイルスは感染力が強く、10〜100個が体内に入っただけで感染する。入念な手洗いと、患者の便や嘔吐物を処理する際は、処理する人以外は3メートル以上離れるなど徹底した対策を続けるべき」と指摘している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月09日 更新)

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