文字 

変形性膝関節症の治療 岡山旭東病院整形外科主任医長 横山勝道

よこやま・まさみち 県立落合高、川崎医大、同大学院卒。川崎医大病院、川崎病院スポーツ・関節外科を経て2007年から現職。主に膝疾患を担当。日本整形外科学会専門医、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会所属。

高位脛骨骨切り術の術前(左)と術後の画像(横山主任医長提供)

 変形性膝関節症(変膝症)は最多の膝関節疾患で、いわば膝関節の老化です。東京大学22世紀医療センターの調査によると、日本の潜在的患者数は約2500万人と報告されており、高齢化社会の進展に伴ってさらに増加すると見込まれています。

 症状は膝関節の痛みから始まり、正座が困難、水がたまる、階段昇降が困難になり、進行すると膝の動きが制限されます。その結果、ゴルフ、登山、旅行など活動的な趣味をあきらめる、外出が苦痛等、日常生活に支障をきたすようになります。

治療法

 初期には筋力強化、体重の減量、軽症時には消炎鎮痛剤の内服、関節注射が一般的です。多くのサプリメントが販売されていますが、効果は定かではありません。これらの方法で効果がないときには手術治療を行います。

 手術治療の最も簡単な方法は関節鏡下滑膜切除術です。これは簡単にいうと膝関節の大掃除です。膝関節に内視鏡を挿入し、剥離した軟骨、半月板の破片や増殖した滑膜(関節液を産生する組織)を除去します。約3日間の入院で行えますが、効果が限定的です。

 よく知られている人工膝関節置換術は、膝関節を人工物で置換する膝関節再建手術です。2種類の方法があり、一つは人工膝関節全置換術です。この方法は膝関節の骨表面をすべて金属で置き換えます。高度に進行した変形性膝関節症にも対応できます。もう一つは人工単顆(たんか)膝関節置換術という方法です。これは膝関節の変性した部分のみ金属に置き換えます。人工膝関節全置換術に比較して、体への負担が少なく、早期退院、社会復帰が可能です。しかし、全ての変膝症に対応できないこと、実施している医療機関が少ないのが現状です。

 さらに高位脛骨(けいこつ)骨切り術という方法があります。聞き慣れない名前ですが、これは下肢を矯正する膝関節再生手術です。人工膝関節置換術が一般的になる前にはよく行われていた方法です。以下、この方法についてお話ししたいと思います。

高位脛骨骨切り術(HTO)

 HTOはその名の通り、脛骨を切る方法です。1950年代に開発された古くからの方法ですが、手術の煩雑さ、リハビリに長期間を要すること等から行われることが少なくなりました。しかし活動を制限しないなどのメリットがあることから、近年見直され、増えている方法です。

 先述した変膝症には、損傷部分によって内側型、外側型に分けられますが、約9割の患者さんは内側型です。一般的に内側型の患者さんはO脚変形で、膝外側は正常な状態に保たれています。そこで、HTOでは正常に残された外側を活用するのです。

 O脚変形があると膝関節内側に荷重負荷がかかりますが、X脚に矯正すると外側に荷重負荷が移動します。そのため、脛骨を関節に近い部分で切ってX脚に矯正します=図、写真参照。こうして膝内側の荷重負荷を軽減し痛みを緩和します。さらに多くの患者さんは膝内側の軟骨が修復されていきます。

 以前は、この骨切り、矯正した状態を保つため、長期間の免荷(足をつかない)が必要でした。しかし近年、人工骨や骨固定材料の進化によって術後早期から荷重歩行が可能となり、入院期間が術後およそ3週間と、ずいぶん短縮されたのです。

 このHTOの適応は、活動性が高い、つまり「ゴルフや登山等をあきらめたくない」「人工関節手術を受けるには若すぎる」といった方です。

最後に

 このように変膝症には種々の治療方法があります。重要なことは、ご自身の目的、生活に応じた治療を選択することです。膝関節痛にお困りの方はぜひ専門医にご相談ください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ