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ヒトのタンパク質、「リン酸化」が輸送効率決定 岡山大大学院・佐藤准教授ら解明

佐藤あやの准教授

 岡山大大学院自然科学研究科の佐藤あやの准教授(細胞生物学、化学生命工学)らのグループは、ヒトの細胞で作られたタンパク質の輸送システムで、タンパク質に初期段階に起きる「リン酸化」という分子構造の変化が輸送効率を決定することを突き止めた。同システムは老化やストレスの影響を受けることが分かっている。将来的に初期段階をコントロールできれば、老化による消化酵素の分泌低下などの改善につながる可能性がある。

 消化酵素や各種ホルモンの分泌、養分の吸収、老廃物の分解などに必要なタンパク質は細胞内の「小胞体」で合成。初期段階に「小胞」と呼ばれるカプセルに包まれ、配送センターである「ゴルジ体」に運ばれる。ここで仕分けされて正しい目的地へ輸送されるという流れは分かっているが、分子レベルのメカニズムは不明だった。

 小胞を構成する物質はさまざまあるが、佐藤准教授らは「Sec31」というタンパク質に着目。カゼインキナーゼ2(CK2)という酵素が触媒となり、リン酸化が起きることを解明した。リン酸化されない変異型やCK2の無い細胞は、小胞の形成速度や量が40〜50%に落ち込んだ。輸送効率を維持するにはSec31のリン酸化が不可欠と分かった。

 老化やストレス、病気などでタンパク質が正しく分泌されない細胞では小胞輸送に問題がある例も多いとみられ、佐藤准教授は「リン酸化が適正に制御できれば、こうした分泌異常を解消できるのでは」としている。成果は19日、米オンライン科学誌プロス・ワンに掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月22日 更新)

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