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ラドンに抗酸化作用 温泉効能実証へ 岡山大大学院・山岡教授ら

ラドンをマウスに吸わせる実験に取り組む山岡教授=岡山大鹿田キャンパス

 岡山大大学院保健学研究科の山岡聖典(きよのり)教授(放射線健康科学)らのグループが鳥取県三朝町の三朝温泉に多く含まれるラドンの健康効果の解明を進めている。マウス実験では活性酸素の働きを抑える抗酸化機能を高め、肝機能障害などを緩和する作用を確認。「湯治」の効能を科学的に実証し、より効果的な治療に生かす方針だ。

 ラドンは放射性元素の一つ。岡山大は三朝町の同大病院三朝医療センターに国内唯一のラドン温泉の熱気浴施設を持ち、呼吸器疾患をはじめ肝障害、糖尿病なども治療している。一定の効果は見られるが、それを裏付けるデータやメカニズムなどは不明な点が多い。

 同大は2009年、センター隣に日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)と共同で三朝ラドン効果研究施設を建設したほか、岡山市の鹿田キャンパスにも実験設備を整え、本格的な研究体制を整備。ウランを微量に含んだ自然界の土から気体として放出されるラドンを、マウスに吸わせる実験を続けている。

 急性肝障害を起こす四塩化炭素をマウスに与えた実験では、1立方メートル当たり千ベクレルのラドンを吸わせたマウスの抗酸化物質が、吸わない場合の1・5倍とほぼ正常値の量を維持した。GOT、GPTなど肝機能低下を示す酵素や中性脂肪の増加も抑制できた。

 抗酸化作用があるビタミンC、Eを与えた場合と比較。体重60キロの人が三朝温泉の一般的な浴室に30分間入ると、レモン3個分の摂取に相当する効果がある―と試算した。

 糖尿病を起こす薬剤を投与した実験でも、ラドンの吸入により血糖値増加やインスリン値減少が半分程度に抑制。炎症物質の増加なども抑え、痛みの緩和にも効果を示した。

 ラドンは半減期が短く、体内に入っても30分ほどで排出される上、今回の実験で与えたのは微量で健康に影響を及ぼす量ではないという。山岡教授は「抗酸化作用などを確認できたことでさまざまな生活習慣病への効果が期待できる。今後、最適な吸入方法や、他に効く疾患も探っていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月29日 更新)

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