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軽度認知障害って何? 万成病院理事長・院長 小林建太郎

 最近、自分自身の物忘れに驚かされる。特に人の名前が出てこない。講演やあいさつの中で出てこないので厄介である。認知症臨床専門医という立場もあって問題は深刻である。

 軽度認知障害をご存じだろうか? 超高齢化時代にあって認知症は社会問題となっているが、精神科医となって34年間、ずっと生理的な物忘れと、アルツハイマー病の最初期の物忘れの境がどこにあるのかが疑問であった。

 講演では、認知症の物忘れは体験の全部を忘れるのに対し、健康老人の物忘れは体験の一部を忘れると話している。具体的に言うと、昨晩の食事をとったかどうか忘れると問題だが、おかずが何だったのかを忘れてもセーフとなる。ただ認知症のごく初期では、体験の全部が抜け落ちることは少ない。

 単なる物忘れの中に、認知症予備軍の人が少なからず存在するのである。医学的に正常と認知症の間のグレーゾーンを軽度認知障害と呼んでおり、診断基準は(1)主観的な物忘れの訴え(2)年齢に比し記憶力の低下(3)全般的な認知機能は正常(4)日常生活動作は自立、認知症ではない―と漠然としている。何も手を打たないでいると、3年で30~40%が認知症に移行するという。自分には仕事が忙しすぎるからと言い聞かせているが…。

 先月、若いスタッフと会話中、テレビ時代劇「暴れん坊将軍」の主演は誰だったか? という話になり、珍しく「マツケン」とすぐに名前が出た。相手から「エー、松山ケンイチはそんな役していない」、物忘れ以前の問題が存在していた。

(2012年12月6日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月06日 更新)

タグ: 万成病院

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