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キレる老人 万成病院理事長・院長 小林建太郎

 少し前まではキレる若者が話題になっていたが、最近はキレる老人が増えているという。年末、暴走老人という言葉をよく耳にしたが、高齢犯罪者の数も激増している。2012年版犯罪白書によると、65歳以上で検挙された人の数は20年前の6倍以上に上っており、とりわけ暴行や傷害などの粗暴犯の増加が著しいとのことである。

 以前学会で、キレやすい人とセロトニンの話を聞いたことがある。脳内神経伝達物質であるセロトニンは、心のバランスやストレス解消など心身の健康に大いに役立ち、キレる脳を改善するという。

 脳内セロトニンの欠乏によりうつ病が発症するともいわれるが、セロトニンは朝の目覚めを良くして爽快感をつくり出すのに有効で、元気の源となる。現代はストレス社会であり、セロトニンを活性化できれば健康状態の改善も可能となる。セロトニンを活性化するには、

 (1)歩くなどリズムのある運動を行う

 (2)朝の太陽を浴びる

 (3)人との触れ合い、身だしなみ

 が有効である。キレやすい人はぜひ実践していただきたい。

 ただ、セロトニン以上に「ありがとう」という言葉がキレる脳に有効なのではないかと私は思っている。「ありがとう」は相手を幸せにすると同時に自分も幸せにする。感謝が感謝を生むのである。ありがとうと言われて悪い気はしない。

 最近、素直に「ありがとう」と言えない自分に気づく。管理者という役割のためか、日々の慢性疲労のためか、頑(かたく)なになっている自分がいる。「ありがとう」を言い合える社会でありたい。感謝はつながりを強固にして、自分自身を成長させる。「ありがとう」先進県岡山、これもいいのではないか。

(2013年1月17日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月17日 更新)

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