文字 

(4)皮脂欠乏症 岡山済生会総合病院皮膚科医長 吉富惠美

よしとみ・えみ 千葉県立安房高、島根医科大(現島根大医学部)卒。岡山大学病院、国立病院機構岩国医療センター、川崎医大川崎病院を経て2011年から現職。日本皮膚科学会専門医。

 秋から冬にかけて、皮膚がカサカサしてひび割れたり、皮膚が粉をふいたように白くなって、かゆくなることはありませんか?

 それは皮脂欠乏症です。

 皮膚の表面の角質という場所の脂が減少することにより、皮膚の水分が減少し乾燥を生ずる病気です。場合によっては、皮膚が赤くなってかゆみが強くなり、夜も目が覚めるほどの症状になることがあります。

 皮膚のうるおいは皮脂・角質細胞間脂質・天然保湿因子という三つの成分によって保たれています。

・皮脂=皮膚から分泌される脂で汗などと混ざって皮膚の表面を覆い、水分の蒸発を抑えます。

・角質細胞間脂質=皮膚の角質細胞同士をくっつけて水分を挟み込み逃がさないようにします。セラミドと言われる物質がこれにあてはまります。

・天然保湿因子=角質層にあるアミノ酸などが水分をつかんで保持します。

 皮脂欠乏症では角質細胞間脂質が減少し、角質がはがれてできたすき間から水分が逃げやすい状態になっています=図1参照。また、角質がはがれてきてすき間ができるため、皮膚のバリア機能が低下して敏感肌になり、少しの刺激でかゆみを感じるようになります。かゆみを感じて皮膚をかくとさらに角質を損傷し乾燥がひどくなるという悪循環に陥ります。それにとどまらず皮膚の炎症がおこり、湿疹となってしまうのです。

 秋から冬にかけて空気が乾燥してくることも影響しますが、一番の要因は、加齢に伴い先に挙げたうるおいのもとになる物質が減少してくるためです。これに加えて、体をゴシゴシ洗う、冷暖房の効かせすぎ、気密性の高い住環境などの生活習慣も要因になってきます。

 ではそうならないためにはどうしたらいいのでしょうか。

 先ほど述べたように、皮膚から皮脂が減り水分が逃げていくことが原因ですので、皮膚に保湿剤を塗って、皮膚にふたをして水分が逃げないようにするスキンケアが治療の基本になります。

 保湿剤はたっぷり塗ることが大切です=図2参照。保湿剤を数カ所に置き、それを手のひらで優しく丁寧に広げます。このときにゴシゴシと擦り込まないことが重要です。1日1〜2回塗るとよいですが、夜は特にお風呂上がりに、できれば入浴後5分以内に早めに塗るのが効果的です。

 保湿剤は化粧水タイプ、ローション・乳液タイプ、軟膏(なんこう)、クリームタイプなどさまざまな種類がありますが、季節と好みに合わせて使い分けましょう。冬は保護する効果が高い軟膏やクリームタイプを、夏はさっぱりとして使用感のよいローションタイプがお勧めです。

 日常生活では、加湿器などで適度な湿度を保つ、皮膚に直接触れる衣類はチクチクしないものを選びましょう。入浴は熱いお湯は刺激になるので、少しぬるめのお湯にたっぷりつかり、ナイロンタオルなどの硬いタオルでゴシゴシ洗わず、せっけんを泡立てて手で優しく洗ってください。

 食事ではアルコールや刺激物はかゆみが増すので控えめにして、脂溶性ビタミン(ビタミンA、E、D)を適度に摂取し、水分をこまめにとってください。

 皮膚が赤くなり、かゆみが強いときは皮膚科での治療(ステロイドを塗る、かゆみどめを飲む)が必要です。我慢せずに早めに受診してください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月04日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ