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診療報酬改定で岡山県内の整形外科 変わるリハビリ 対応躍起 運動器治療に専従療法士必要 人材育成急ぐ

機器を使いながら機能訓練の講習を受ける看護師=岡山市内の整形外科医院

 今月から診療報酬が改定されたことを受けて、岡山県内で、治療の基準が変わる整形外科医院などが対応に追われている。背骨や関節の機能回復を目指す運動器リハビリテーションに、専門の医師と専従の理学療法士(PT)か作業療法士(OT)の配置が必要となり、施設によっては従来通りの治療ができにくくなるケースもあるためだ。経過措置として看護師らによる“みなしPT”を認める国の方針を踏まえ、独自に資格を設けた日本運動器リハビリテーション学会と連携し、診療水準の向上へ人材育成を急いでいる。

 医療機関はこれまで、温熱療法や運動療法などの運動器リハビリを保険適用の治療として行ってきたが、改定で、治療に当たる医師は運動器リハビリの経験が三年以上あるか研修を受けた専門医で、PTかOTの一人以上配置が条件となった。

 改定の狙いを厚生労働省は「施設によっては効果のないリハビリが行われている。専門性を高めて診療の質的向上を目指す」という。

 しかし、地域の小規模な医院や診療所ではPTのいないところが多く、「医療機関の中には治療が制限されることも考えられる」と、日本運動器リハビリテーション学会などは国に何らかの措置を講じるよう要望した。


 このため国は、専門医の監督下であれば、相応の研修を受けたマッサージ師や看護師らがPTの代わりを担えるという当面の経過措置を打ち出した。

 国の動向を見ながら対応を検討していた日本運動器リハビリテーション学会は昨年十一月、看護師らを対象にセラピスト研修認定制度を創設。三月から各地で研修会を始め、専門医を対象にした研修会も開いている。

 岡山県内では県臨床整形外科医会などが三月、セラピスト研修会を二度実施。それぞれ約百人が受講し、認定試験に挑んだ。

 だが、日本理学療法士協会などからは「講習を受けるだけで、国家資格である理学療法士と同一に扱うのはどうか」という疑問の声も上がる。

 これに対し、日本臨床整形外科医会理事長を務める竜操整形外科病院(岡山市藤原)の角南義文院長は「急な基準変更だけに代替措置は必要。今回の改定を、質の高い運動器リハビリを実現する機会にしたい」と話す。

独自に講習

 「左手をゆっくり上げてみましょう。一、二、三…」。岡山市雄町のおまち整形外科医院。休診日の木曜午後、山脇康正院長が看護師に実技講習を始めた。

 同医院はPTがおらず、看護師三人が認定試験を受験。山脇院長は「治療の充実には常に研修が欠かせない」と独自に講習も始めた。看護師に運動器疾患の原因や症状、治療法に加え、機器を使った機能訓練を指導。「看護の立場から患者の体調変化にも敏感に対応できる」と期待する。

 看護師の牧敏恵さん(48)は「専門性を身に付けてリハビリの狙いなどを患者に正確に伝えられれば、効果も上がる」と意欲を見せた。

 四月からは介護保険制度が変わり、要介護度の軽い高齢者に筋力向上トレーニングなどの指導を行う介護予防サービスが導入された。運動器リハビリにも新たな役割が期待されている。

 角南理事長は「寝たきりや要介護状態にならず、元気で活動的に暮らすことができる『健康寿命』をいかに延ばすか。医療、介護の両面から質の高い運動器リハビリを提供していかなければならない」と話している。

ズーム

 運動器リハビリテーション 運動器と呼ばれる骨や関節、筋肉、神経など体を支えたり、動かしたりするための器官の機能障害を回復させる療法。患部を温め血流の流れをよくする温熱療法や、硬くなった関節を機器などを使いながらゆっくり動かし、可動域を広げる運動療法などがある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年04月11日 更新)

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