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人工網膜フィルム治験準備 岡山大大学院グループ開発

松尾、内田両准教授が治験申請する(右から)人工網膜フィルムと、原料の光電変換色素、ポリエチレン粉末

 岡山大大学院の医工連携グループは、目の網膜異常患者向けに独自開発した人工網膜フィルムの「医師主導治験」準備を進めている。医療機器の審査、承認などを担う国内機関に申請、年内にもスタートさせる。岡山大での医師主導治験は初めてという。

 グループは松尾俊彦・医歯薬学総合研究科准教授(眼科)、内田哲也・自然科学研究科准教授(高分子材料学)ら。計画では、同大病院で視力低下や視野が狭まる網膜色素変性の患者ら4人へ、主に安全性を確かめる最初の治験を無料で実施。5〜10ミリ角のフィルムを眼球奥に挿入して治療する。

 明らかな副作用がなければ、さらに10人に行い、視覚回復などの効果を確認する。他病院などでも同様の治療を行い、実用化に結び付ける方針。

 審査機関・医薬品医療機器総合機構(東京)への事前相談では、人工網膜の品質均一化に向けた製造体制確立のほか、急性毒性検査、長期間の埋め込み検査などを助言されたという。早ければ今夏にも治験申請する。

 松尾准教授らが2002年から10年がかりで開発した人工網膜は、光を電気信号に変換する光電交換色素とポリエチレンフィルムによって、視細胞の働きを代替。独自の製法で不純物を排除しており、毒性はないという。網膜色素変性のラットにフィルムを入れ、動く模様を見せたところ目で追うなど、視覚の回復が実証されている。

 治験費は研究グループが病院と協力して確保するが、市場への投入には企業の協力が不可欠。松尾准教授は「治験と並行して製品化に興味を持つ企業を探し、一刻も早く患者さんに届けたい」としている。



 医師主導治験 海外では承認されているが、国内では未承認の医薬品や医療機器の早期導入を目指し、医師自らが治験を企画・立案する制度。2003年の薬事法改正で認められた。新薬の有効性や安全性などを評価する治験は通常、製薬会社や医療機器メーカーが主導するが、患者が少ない疾患は採算性などから実施されにくいため、同制度が始まった。従来は書類作成など医師側の負担が重かったが、05年に手続きの簡素化などが行われた。原則として、医薬品医療機器総合機構に届け出れば実施できる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月11日 更新)

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