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膵島細胞検査薬を開発 岡山大、マウスで確認

野口洋文客員研究員

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の野口洋文客員研究員らは、インスリンを分泌する膵島(すいとう)細胞を肝臓に注入し小児に多い1型糖尿病患者らを治療する「膵島移植」後に、同細胞が機能しているかどうかを調べる薬剤を開発した。マウス実験ではMRI(磁気共鳴画像装置)で黒く映し出すことに成功。拒絶反応の早期発見など移植後の治療に役立てるため、ヒトへの応用を目指す。

 移植はドナー(臓器提供者)の膵臓から抽出した膵島細胞を、患者の肝臓血管中にカテーテルで50万個(5―7CC)注入。肝臓の中で生き残る生着率は50%以下のため、多くの場合は2度の移植が必要になる。認定施設は岡山大病院など国内9病院。

 野口客員研究員らは、MRIで使われている既存の造影剤に着目。膵島細胞と造影剤はともにマイナスの電気を帯びて結合が困難なため、国内のメーカーに依頼して造影剤をプラスに変換した。それをマウスの膵島細胞表面に付着させて腎臓の皮膜に注入し、MRIで撮影すると細胞を黒く映し出すことができた。

 画像で生着状況の把握が可能になったため、2度目の移植判断のほか、他人の臓器や組織が体内に入ることで起こる拒絶反応の兆しを確認でき、早期治療に役立てられるという。これまでは、血糖値から予測するしかなかった。

 生着率の低さは、炎症や血流不足などが原因との研究もある。野口客員研究員は「炎症を抑えたり、血流を増やす薬剤の投与で、生着率を改善させる研究にも取り組みたい」としている。

 同大病院で膵島移植を希望し、登録する患者は4人。現在は未実施だが、近く関係機関からのドナー情報提供が始まる予定で、その後に移植が可能となる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月14日 更新)

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