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人工単顆膝関節置換術(UKA) 岡山旭東病院整形外科主任医長 横山勝道

よこやま・まさみち 県立落合高、川崎医大、同大学院卒。川崎医大病院、川崎病院スポーツ・関節外科を経て2007年から現職。主に膝疾患を担当。日本整形外科学会専門医、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会所属。

(横山主任医長提供)

 「人工関節」は多くの方が耳にされたことがある関節の治療法だと思います。日本では1年間に7万人以上の方がこの人工膝関節置換術を受けられています。

 この手術には大きく分けて2種類あることはあまり知られていません。それは、通常多く行われている人工膝関節置換術(TKA)と、最近、徐々に増えつつある人工単顆(たんか)膝関節置換術(UKA)です。以下、このUKAについてお話ししたいと思います。

UKAの歴史

 UKAは簡単にいうと小さな人工膝関節です。この方法はTKAより早くに開発が始まりました。しかし、TKA、UKAとも発展途上の段階の時期に、特にUKAは満足できる治療成績にはいたらず、世界に広く受け入れられる治療にはなりませんでした。その後、TKAが主流となっていきました。しかし、1974年に英国オックスフォード大学で新しいUKAが開発され、1980年から使用されました。

 1990年代まではUKAの長期成績が不安定であったこと、手術手技が難しいことから使用は限られるものでした。しかし、良好な長期臨床成績が報告されるにつれ、2000年代から徐々に普及しています。現在、日本ではTKAは1年間に約7万例行われていますが、UKAはその10分の1程度まで増えてきました。

UKAの特徴

 人工膝関節置換術の適応となる患者さんの多くは変形性膝関節症です。変形性膝関節症はその変性した部分によって内側型、外側型、全型に分けられますが、その9割の患者さんは内側型です。そこで、変性した内側のみ(まれに外側のこともあります)を金属で置換する方法がUKAです=図1参照

 UKAはTKAの3分の1ほどの小さい構造です。従って、手術の傷も小さく、手術による出血量も少なくできます。しかしながら、UKAの最も優れた点は、皮膚の傷よりも、膝関節内部への侵襲が少ないこと、つまり、筋肉、軟部組織の切離・剥離がはるかにTKAより少ないことです。

 関節内への侵襲が少ないことによって、回復は格段に早くなります。例えば、TKAでは入院がおよそ1カ月弱ほどの期間を要しますが、UKAでは2、3週間ほどの入院で済みます。また膝の可動域に制限が生じません。正座できるほど膝関節を屈曲できるような患者さんでも、TKAを行うと屈曲域に制限が生じます。しかし、UKAでは術前と同じように曲がり、手術による可動域制限は生じません。TKAも手術治療として優れた方法ですが、このようにUKAはTKAにまさる点が多々あります。

 では、実際に左膝の手術を受けられた方の写真を見てみましょう。手術前のレントゲン写真では内側型の変形性膝関節症でした=図2参照。MRI、関節鏡検査等を行ってからUKAを選択し、手術を受けていただきました=図3参照。手術の2日後から歩行を開始し、およそ3週間で退院となりました。退院直前には膝関節は十分屈曲できるようになっています=図4参照

 しかしUKAも弱点はあります。それは適応になる方が限られるということです。膝関節の内側のみでなく、外側にも変性がある場合にはTKAの適応となります。高度の肥満も避けるべきとされています。またUKAはTKAと異なり、下肢のアライメント、つまり、変形(多くの方は内反変形でO脚)を矯正できません。そのため、高度の変形にも適応となりません。

最後に

 このように人工膝関節治療には異なる方法があり、適応、手術の大きさがかわってきます。通常、手術治療では、同じ治療効果が得られるなら軽い手術方法が選択されます。人工膝関節治療を受けることになった場合、専門医にどの方法が最も適しているか、相談してみてください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年03月04日 更新)

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