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治療食を楽しくおいしく 岡山のシェフと栄養士がレシピ考案

湯浅薫男シェフ(左)と坂本八千代さん

高血圧市民講座で調理実演された減塩食メニュー。ハーブやスパイスがうまく活用されている

 持病で治療食や制限食が必要な人にもおいしい食事を楽しんでもらおう―。テレビ出演で知名度の高い岡山のフレンチシェフと病院の栄養士がタッグを組み、糖尿病や高血圧などの患者にも勧められるレシピを開発。市民講座などで調理実演し、家庭での実践を呼びかけている。

 ホテルオークラ岡山総料理長を経て、病院併設の高齢者住宅・倉敷スイートタウン(倉敷市中庄)レストランの総料理長を務める湯浅薫男(しげお)さん(61)と、岡山大病院臨床栄養部副部長の坂本八千代さん(58)。日本糖尿病協会の市民公開シンポジウム(2011年9月)を皮切りに「共演」が始まった。

 3月10日、同病院と日本高血圧協会が岡山市で開いた市民講座は、高血圧を改善する減塩食がテーマ。坂本さんがだしのうまみや天然の酸味を利用することなど減塩調理のポイントを説明し湯浅シェフが腕を振るった。

 ハーブを漬けおいた塩水にくぐらせたエビや魚を、強力粉をビールで溶いた衣で揚げたフリッター▽ジャガイモとアサリ、ムール貝をハーブで蒸し煮したスープ▽キノコペーストや野菜マリネ、ハーブミックスを載せたカナッペ…。

 どれも1人前の塩分が0・2〜0・7グラム程度。1食2グラム、1日6グラム以内の塩分に抑えながら、ハーブの香りやレモンの酸味がふくよかに広がり、薄味を感じさせない。果物のドレッシングや野菜をミキサーにかけたソースで彩りも豪華だ。

 湯浅シェフの手さばきはスクリーンに拡大映写され、ユーモアを交えて実況された。92歳のしゅうとめの食事に生かしたいと聴講した主婦(68)=岡山市中区=は「塩は少量を最後に入れると味が引き締まると教わり、勉強になった。まずは野菜マリネを作ってみたい」と喜んでいた。

 2人の共演は、坂本さんが東日本大震災発生直後、宮城県気仙沼市で救援活動に参加したのがきっかけ。避難所や在宅の被災者を訪問し、栄養の偏りで体調を崩したり、持病を悪化させる人を目の当たりにした。家庭でできる健康食の調理法を普及させる必要性を痛感したという。

 フランスで修業した湯浅シェフは、キュイジーヌ・マンスールという脂肪分やカロリーを抑えた健康重視のフレンチを学んでおり、坂本さんの相談を受けてメニューを考案。今回も2人で3回打ち合わせし、塩分量を計算しながら試作を重ねた。「新しいアイデアが次々にわいて、私自身も発見することが多い」と、湯浅シェフも新たな挑戦に手応えを感じている。

 5月には肝臓移植を受けた患者たちのグループから要請を受け、2人で肝臓に優しいランチメニューを提供する予定。坂本さんは「今後も食べることが健康につながるような料理を紹介したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月05日 更新)

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