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胃がん抑制に期待 ピロリ菌の除菌治療

岡田裕之教授

 国内で年間5万人が死亡する胃がんの主原因「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」。公的医療保険を使ったピロリ菌の除菌治療は、胃潰瘍などに限られていたが、今年2月、慢性胃炎にも拡大された。病気抑制につながると期待される。2011年から専門外来を行う岡山大病院(岡山市北区鹿田町)光学医療診療部の岡田裕之教授(消化器内科)に聞いた。

 ―ピロリ菌とは。

 「5歳くらいまでの子どもが感染しやすく、経路は井戸水や感染者の母親からの食事の口移しなど。戦後の混乱期など衛生状態が悪かった時代に比べて減ってはきたが、50代以上の日本人の5割以上が感染しているという報告もある」

 ―感染するとどうなるのか。

 「胃の粘膜表面で増殖、数カ月以内に慢性胃炎となる。現在、胃がんの発症者数は年間11万人とされるが、そのほとんどはピロリ菌が原因だ」

 ―除菌治療の方法は。

 「2種類の抗生剤と胃酸の分泌を抑制する薬の計3種類を1週間服用する。尿素を含んだ液体を飲んだ後に行う呼気試験で除菌できたかを判断し、患者の7、8割は成功する。失敗した人の菌は抗生剤への耐性があるため、抗生剤1種類を変更して2回目を行う。これで除菌できないのは3%ほどだ」

 ―保険適用の対象が拡大された。

 「これまでは胃潰瘍や早期胃がんのため、内視鏡に付けた特殊なナイフで治療を行った患者らが対象だったが、内視鏡検査で慢性胃炎と診断された患者も保険適用になった。ただ、対象は2回目の除菌までだ」

 ―岡山大病院では11年から専門外来を設けている。

 「慢性胃炎や3次除菌を希望する保険適用外の人に、費用を全額負担してもらう自由診療で行ってきた。今後は3次除菌を対象に続けていく方針で、費用は1万5千円ほど」

 ―治療を受けた人が気を付けることは。

 「治療後に必ず判定検査を受けること。また除菌に成功しても、胃がんのもとが既にあれば、がんになることもある。毎年検診を受け続けてほしい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月07日 更新)

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