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岡山大病院で膵島移植可能に 中四国初、糖尿病患者に朗報

 ドナー(提供者)情報が得られず、実質的に不可能だった岡山大病院(岡山市北区)での「膵(すい)島移植」が実施できる見通しになったことが8日、分かった。日本膵・膵島移植研究会(福島県)からの情報提供が決定。1型糖尿病に苦しむ待機患者にとって朗報となった。国内の実施施設は京都大など9病院で、症例数は34例あるが、岡山大で実施されれば中四国地方で初めて。

 膵島移植は1型糖尿病や膵炎などで膵臓を全摘するなど、体内で血糖値を調整するインスリンがつくり出せなくなった患者が対象。膵島細胞を抽出して移植するため「臓器移植」ではなく、皮膚などと同じ「組織移植」に区分される。

 岡山大では京都大や米国で経験がある野口洋文客員研究員らが担当。2011年に実施施設となり、患者も5人が登録、準備は整っていたが、関係機関との調整が遅れるなど、ドナー情報が得られない状態だった。

 11年から情報提供に向けた協議を開始。脳死、心停止ドナーを把握する臓器斡旋(あっせん)機関・日本臓器移植ネットワーク(東京都)から、組織移植をまとめる西日本組織移植ネットワーク(大阪府)、同研究会を通じて提供されることが決まった。

 同大での治療は、費用の一部が保険適用される「先進医療」に認定されておらず、高額となるため、当面は病院が全額負担する。退院後の免疫抑制剤などの治療費は保険適用される。

 野口客員研究員は「ようやくスタートラインに立てた。安全で効果の高い移植に向け、万全の体制づくりを急ぎたい」としている。


 膵島移植 米国で1970年代に始まり、国内では2004年に京都大が初めて実施した。インスリンを分泌する膵島細胞を膵臓から抽出した後、患者の肝臓血管中に50万個(5〜7CC)をカテーテルで注入。複数回の移植で30万個以上が定着すれば、インスリン療法から解放される。抽出酵素の安全面から07年に中止されていたが、新酵素が開発され、福島県立医科大など6病院は今月8日から「先進医療」として実施する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月09日 更新)

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