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支援の内山・大妻女子大助教授 岡山で講演 「高機能自閉症」共感持ち接して 分かりにくい障害 欠かせぬ試行錯誤

「高機能自閉症の子どもには、障害の特性に基づく支援が必要」と訴える内山助教授

 日常生活の中で、「わがまま」「しつけができていない」と誤解されがちな、高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもたち。明らかな知的発達の遅れがないため、脳機能の障害と理解されず、生きづらさを感じることが少なくない。児童精神科医としてこうした子どもの診断、支援に当たっている内山登紀夫・大妻女子大助教授が岡山市内で講演。「障害を理解し、特性に基づく支援を考えて」と訴えた。

 岡山県自閉症児を育てる会が、地域での支援者を養成するセミナーの一環として開催。医療・保健、教育関係者や保護者ら約三百五十人が参加した。

 内山助教授は高機能自閉症について「定義はさまざまだが、一応IQ(知能指数)70以上」とした上で、「言語発達の遅れが少ないアスペルガー症候群、知的障害を伴う古典的な自閉症も含め、同じ特性を持つ『自閉症スペクトラム(連続体)』として対応したほうが有効な支援になる」と前置きした。

 高機能自閉症・アスペルガー症候群は、知的障害を伴わないものの、社会性、コミュニケーション、想像力の三つの障害を基盤に持つ。こうした障害は、日常生活にどのような形で現れるのだろうか。

 例えば、肥満の人に対して「あなたは太っている」と“正直”に述べるような言動をしがちだ。認知発達の異常によって「相手がどう思うか」を読み取ることが難しいためで、「全体状況を考慮して判断したり、相手の気持ちに添って物事を理解するのが苦手な子たち」といえる。

 また、特定の目に映る物や聞こえる音、スキンシップなどを極端に避けるといった「感覚過敏」、体を前後に揺するロッキングや、特定の動きや発声を繰り返すチックなど姿勢・運動の異常も、特性の一つに挙げられる。


自尊心大切に

 高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもに対する支援の原則として、内山助教授は「自尊心を持って生きられるよう、共感的に、ポジティブに、穏やかに寄り添って」と述べた。

 偏食が目立つ場合は「わがままだから食べないのではなく、味覚過敏のため」と障害の特性を踏まえ、共感的に接してみる。「こだわり」が邪魔をするスケジュールの変更も、事前に知らせれば本人の苦痛を避けることができるという。

 母親に「飯を作れ」、教師に「これ、やっといて」などと“横柄”なしゃべり方をする子がいるが、「父親が母親に言っていた内容をそのまま覚えて使っていたり、上下関係の理解が足りない」と解釈する。その上で、適切な表現を小声で教えたり、紙に書いて机の上に置いておくことが有効だそうだ。

 「みんなで○○しよう」といった話しかけを理解できない子も少なくない。そんな場合は、グループ全体に話した後で、個別に話しかけたり、別の機会に一対一で内容の理解度をチェックしてみる必要もある。


“正解”はなし

 注意したいのは、個々の子どもによって障害の現れ方が異なるため、支援方法に“正解”がない点。「仮説に基づいて支援のプランを立てる。うまくいかなければ、また別の仮説で考える―という試行錯誤が欠かせない」と強調する。

 高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもが抱える「生きづらさ」は多岐にわたる。プランづくりの苦手さ、回りくどい会話、対人関係の困難さなど、生活のあらゆる場面で障害が悪影響を与えるからだ。

 内山助教授は「彼らを社会の片隅に追いやらないためには、周囲が特徴を知っておく必要がある。子どもの特性に敬意を払いつつ、いい点を伸ばせるような関係づくりを進めてほしい」と締めくくった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年04月06日 更新)

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