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糖尿病克服へ連携体制構築 かかりつけ医と基幹病院

最新の糖尿病診療について説明する四方副センター長

 “予備群”を含めると2200万人以上が罹患(りかん)しているとされる国民病の「糖尿病」。県内では、専門医がいる基幹病院と、かかりつけ医のいる診療所などが役割を分担、協力しながら、多くの患者を診療する「糖尿病の医療連携体制」の構築が進んでいる。進行すると人工透析などが必要となり、「生活の質」を大きく下げてしまう糖尿病。その早期発見と症状悪化防止に向けた取り組みを紹介する。

 「診断のポイントはやはり、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)。後者は国内標準値JDSと国際標準値NGSPが併用されているが、来年4月にはNGSPに完全に移行される」

 岡山衛生会館(岡山市中区古京町)で2月に開かれた医師や看護師向けの研修会。糖尿病専門医の四方賢一・岡山大病院糖尿病センター副センター長と田中茂人・県医師会理事が約100人の参加者に説明した。

 専門医が限られる中、糖尿病治療で重要な役割を果たすのが地域のかかりつけ医たちだ。診療所や一般病院でカロリー制限や減塩といった食事療法、薬物療法など継続的な診療に当たる「総合管理」を担うからだ。そのためには研修会の受講が必須で、最新の糖尿病診療を学ぼうと、参加者は真剣な表情で資料に目を通す。

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 県と県医師会が進める連携体制づくりでは、県内の医療機関の機能を四つに分類する。まずはかかりつけ医らによる「総合管理」。血糖値のコントロールが難しくなった患者には入院治療などを施す「専門治療」▽糖尿病の慢性合併症である網膜症、腎症、心臓病などに対応する「慢性合併症治療」▽生命の危機が迫る昏睡(こんすい)などに陥った患者を救う「急性増悪時治療」―があり、それぞれが緊密に連携を図る。患者に最適の医療を施せる医療機関を紹介し、役割を果たしながら糖尿病の“克服”を目指す。

 どの病院がどの分類に属するのかは県のホームページで公開している。県健康推進課は「患者が受診すべき病院や診療所の選定に役立つほか、医療機関同士の連携もスムーズになる」とする。

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 “特効薬”がなく、息の長い治療が必要な糖尿病には、医療機関の連携だけでは不十分だ。早期発見に向けた健診に食事や運動、禁煙といった保健指導、医薬品の処方や服薬指導、保健所などによる啓発活動…。薬剤師や保健師、行政などとも連携が欠かせない。

 県は2012年、地域の医療課題の解決を目指す「第2次地域医療再生計画」(11―13年度)を策定し、糖尿病等生活習慣病医療連携推進事業を岡山大病院に委託。同大病院と県医師会などが中心となり、他県にはない体制づくりを急いでいる。

 四方副センター長は「県内で110人程度の専門医だけで患者さんの診療は不可能。県を挙げた『チーム』を作り上げ、糖尿病に挑みたい」としている。

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四方賢一・岡山大病院糖尿病センター副センター長に聞く 自己流の治療は大変危険

 ―血糖値が上昇する糖尿病は、長く続くと腎臓や目などさまざまな臓器に障害を及ぼしかねない病気だ。なぜ起きるのか。

 「糖尿病には1型と2型がある。1型は自己免疫が異常になるなど、突発的に、血糖をコントロールするインスリンをつくり出す細胞が破壊されて発症する。思春期ごろまでに罹患するケースが多い。2型はインスリンの分泌不足に加えて、偏った食生活や運動不足などが原因となる生活習慣病だ」

 ―糖尿病はエネルギー源となるブドウ糖が細胞内に取り込まれにくくなるため、余ったブドウ糖が血糖値を押し上げている。診断方法は。

 「診断基準には、(1)朝食前の空腹時血糖値(2)75グラムのブドウ糖を飲んだ2時間後に測る血糖値(3)いずれでもない随時血糖値(4)採血日から1―2カ月前の血糖の状態を推定する『HbA1c』の国際標準値の四つがある。このうち、(1)―(3)の2項目、または(1)―(3)の1項目と(4)が基準値を超えた場合に糖尿病と診断する。この値に近い方たちを予備群と呼んでいる」

 ―治療の方法は。

 「軽症ならばまず食事療法や運動療法を行う。その次に血糖をコントロールする薬物療法がある。血糖値が高くても自覚症状がないことが多い。自己流の治療は大変危険であり、医師とよく相談してほしい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月22日 更新)

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