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IL2投与でT細胞活性化抑制 岡山大病院・谷本教授ら解明

 造血幹細胞移植後に発症する慢性合併症・移植片対宿主病(GVHD)患者に対するタンパク質の一種「インターロイキン2(IL2)」の投与治療の研究で、岡山大病院血液・腫瘍内科の谷本光音教授、松岡賢市助教らは、疾患の主原因とされる「T細胞」活性化の抑制といった症状改善の仕組みの一端を明らかにした。

 IL2投与による症状の改善効果は、これまでの研究で確認済み。今回の成果は、同内科が予定するヒトへの臨床研究の安全性を高め、将来の臨床応用を加速させる大きなステップとなる。米科学誌サイエンスの関連誌に掲載された。

 慢性GVHDは、ウイルスなどの異物を攻撃する提供者側のT細胞が、患者自身の細胞を敵とみなして起こす免疫疾患。移植患者の約半数が発症し、口腔(こうくう)内の乾燥、呼吸困難など重症を呈する。標準治療のステロイドが効かない患者もおり、新たな治療法の確立が求められている。

 松岡助教らは留学していた米ハーバード大付属がん研究所で、ステロイド治療が無効な米国人患者にごく少量のIL2を投与し、症状が改善した患者からT細胞と、その攻撃を沈静化させる制御性T細胞を取り出して分析。T細胞の活性化が抑制され、一方で制御性T細胞の数が増加する効果が生じたことを突き止めた。

 白血病治療などに伴う造血幹細胞の移植患者は、国内だけで5千人とされる。松岡助教は「仕組みの解明で薬剤投与後の患者をケアする指標が得られた。安全な臨床研究治療を行い、一刻も早く医療現場に届けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月23日 更新)

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