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血糖値下げる化合物作製 岡山大大学院生ら、治療薬開発へ成果

宗兼将之さん

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の大学院生、宗兼将之さん(生体機能分析学)らは、腸管などでの吸収効率が高く、血糖値を下げる効果のある新しい亜鉛化合物を作製した。予備群を含めると2200万人が罹患(りかん)している2型糖尿病の新たな治療薬の開発につながる成果という。

 亜鉛は成人の体内に2グラム含まれ、健康維持に欠かせないミネラルで、従来の研究で血糖値を下げる効果があることが分かっている。しかし、腸管での吸収率が低く、過剰投与すると嘔吐(おうと)や下痢などの副作用が起こるため、体内に長くとどまって腸管粘膜に溶けやすい薬剤の開発が求められている。

 グループは亜鉛に窒素や炭素、水素、硫黄などを結合させた亜鉛化合物を作製。糖尿病のマウスに2週間与えたところ、血液1デシリットル当たり500ミリグラムを超えていた血糖値が300ミリグラムまで低下。エネルギー代謝を制御するホルモンの濃度も正常値まで下がったという。

 特殊なカメラで化合物の体内での動きを観察した結果、通常のマウスではすぐに排出が始まるのに対し、今回の化合物は4〜8時間後も高い濃度で体内にとどまっていた。

 研究成果は近く欧州専門誌に掲載されるほか、7月上旬にスペインである国際シンポジウムで発表する。

 指導した榎本秀一教授(生体機能分析学)と宗兼さんは「顕著な副作用など安全性も確かめ、ヒトの治療薬として活用できるよう研究を続ける」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月22日 更新)

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