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放射性薬剤撮影カメラを高画質化 岡山大大学院教授ら、撮影時間も短縮

高画質化に成功した特殊カメラのグレイ

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の榎本秀一教授(核薬学)らは、生体を傷つけることなく、体内に注入した複数の放射性薬剤(プローブ)の位置を映し出す特殊カメラ「GREI(グレイ)」を改良し、高画質化と撮影時間の大幅短縮に成功した。一部のがん疾患などの原因解明や治療法開発につながる成果という。

 グレイは、放射性薬剤が出すガンマ線の感知装置を二つ並べた構造で、複数のガンマ線を同時撮影できるのが特長。2008年、分子イメージング技術の高度化へ、理化学研究所次世代イメージング研究チームリーダー兼務の榎本教授と、理研の本村信治副リーダーらが世界で初めて開発したが、撮影感度の低さなどが課題だった。

 グループは、二つの感知装置を最適な距離に近づけることで感度を大幅にアップ。データ処理の専用ソフトも独自開発し、従来の10倍以上の高速化を実現した。

 実証実験では、乳がんなど3種類のがん細胞株を皮下注射したマウスに、銅を活用したPET(陽電子放射断層撮影装置)用プローブと、亜鉛の放射性同位体を投与。いずれも鮮明に撮影でき、従来10時間以上要した画像の撮影、処理の時間も約1時間に短縮したという。

 グレイは乳がんや糖尿病の治療への活用が期待され、榎本教授らは「撮影時間のさらなる短縮など性能向上を図り、創薬や早期の疾患診断に貢献する分子イメージング機器に改良したい」としている。

 分子イメージング PETなどの特殊機器を使用する。がんなどに集積する性質を持つ分子に、フッ素などの放射性同位体を付加したプローブと呼ばれる薬剤を生物に投与。プローブから放出される陽電子が崩壊する際に出す2本のガンマ線をPETがとらえ、分子の動きやがんの位置などを映像化する。グレイはPET用プローブのほか、1本しかガンマ線を出さない亜鉛やマンガンの放射性同位体なども容易に撮影できる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月06日 更新)

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