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病と闘いパラグライダー20年 総社・西村さん、フライト700回

仲間に支えられ、パラグライダーに挑戦する西村さん(左)=2011年11月21日、笠岡市

 手脚の震えや歩行障害が生じる神経難病・パーキンソン病を患う総社市、西村範生さん(81)が20年にわたり、パラグライダーに挑戦している。体が動かなくなる前に幼いころからの夢をかなえたい―と発病後に一念発起し、これまでのフライトはおよそ700回。「チャレンジこそが最大のリハビリ」と空を舞い続ける。

 総社市に生まれ、岡山大を卒業後、高校教諭や同大教授を歴任。60歳の時、両手が震える症状が現れ、医師に病名を告げられた。進行すれば自力歩行が困難になる難病。憧れていた“空を飛ぶこと”を実現するには今しかないと、1993年、定年を前に退任し、62歳で玉野市のパラグライダースクールに通い始めた。

 講習を経て約2カ月で始まった体験フライトでは、ブレークコードと呼ばれる舵取り用ひもが手の震えで思うように操れず、直進や平行状態の保持に苦労した。くじけそうになったが、そのたびに講習で指導者とともに飛んだ玉野、倉敷市の青々とした空を思い起こして乗り越えた。

 「背中から翼が生えたような感覚に包まれ、涙がこぼれた。病気に負けずに生きてきてよかった」。体験を重ね、2年半がかりでライセンスを取得した。

 2007年ごろからは愛好者でつくる「笠岡フライトクラブ」に所属。20―60代のメンバー約50人とともに年10回程度飛行する。「足腰が弱いため離陸時は補助が必要だが、一度飛び立つと旋回も角度調整もお手のもの」と森山佳則代表(63)=笠岡市。

 10年ほど前には病状が一気に進んだ。まっすぐ歩いたつもりでも右に曲がったり、体力の衰えや症状の悪化を感じる場面は今も少なくない。ただ、フライトを諦めることはなく、屈伸など体操も日常に取り入れ、その進行と闘う。

 これまでに倉敷、笠岡、玉野、新見市の空を“制覇”した。最長飛行時間は約1時間。目標はその記録の更新という。西村さんは「どんなことも忘れて自由になれる爽快感が一番の魅力。動ける限り、生きている限り飛び続けたい」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月11日 更新)

タグ: 脳・神経

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