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一時中止どう説明 広がる戸惑い 子宮頸がんワクチン、県内市町村

倉敷市が中学生向けに作った子宮頸がんワクチン接種の案内ちらし。国からの要請で利用されることはなかった

 厚生労働省が、子宮頸がんワクチンの接種を積極的に呼び掛けるのを一時中止するよう勧告したことで、市町村の間で戸惑いが広がっている。岡山県内では重篤な副作用の報告はないものの、対象者への個別の案内を急きょ取りやめた市もある。接種の必要性を認めながら積極的には勧奨しないという国の方針も分かりにくく、子どもや保護者にどう説明するのか苦慮している。

 子宮頸がんワクチンは4月、小学6年から高校1年相当の女子を対象に、国が接種を勧奨する「定期接種」になったばかり。全ての希望者が原則無料で接種を受けられるよう、市町村に義務付けた。

 しかし、原因不明の痛みやけいれんなど副作用が疑われる例が相次いで報告され、国の専門部会が14日、実態解明が進むまでは積極的に勧めるべきではないと結論づけた。岡山県内でも、重篤とは言えないものの3件の報告があったという。

 今回、国が「積極的な勧奨」としたのは、個々の対象者にちらしやはがきで直接呼び掛けるもの。不特定多数を対象にしたホームページなどでの周知は問題ないとしている。

 倉敷市では14日朝、29中学校へ接種を呼び掛けるちらし約2400枚を送ったが、専門部会の動きや国の要請を受け、夕方になって各中学校に生徒へ配布しないよう急きょ連絡。ホームページに副作用の情報を載せたり、医療機関に国の通知を知らせるなど対応に追われた。

 倉敷市保健所によると、保護者からの問い合わせはまだ少ないが、接種が半年間で3回必要なため、既に1、2回目を済ませた人から「しばらく間隔を開けても大丈夫だろうか」との相談が数件あったという。

 5月に約8千人にはがきを出した岡山市は、「今回の国の通知内容をあらためて知らせるか、学校を通じて周知するか対応方法を検討中」という。4月に案内を送った総社市は、学校に副作用などの情報を提供する方針だ。

 子宮頸がんワクチンの接種は、2010年11月から国が接種費用を助成して実質無料化され、県内でも12年度末までに4万3千人が受けている。高い予防効果が期待されるとして、各市町村とも積極的に勧めてきただけに戸惑いは隠せない。「国が副作用の調査結果を示すまでは、接種は医師とよく相談して判断してくださいとしか説明できない」と岡山市保健管理課は言う。

 県北のある診療所の院長(46)は「いいとも悪いとも言えないようでは接種を受ける方が困る」と指摘。「例えば既に1回受けた人は副作用を理解してもらった上で勧めてみて、まだ受けていない人は当面見合わせるなど、個別の状況に合わせて対応すべきだろう」と話している。

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 子宮頸がんワクチン 子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンで、7割を占めるタイプの感染に効果があるという。ワクチンと副作用との因果関係は不明なため、厚生労働省は勧奨の中止を決めた。効果を重視して接種を希望する人のため、定期接種からは外さない。子宮頸がんは20〜39歳の女性のがんとしては乳がんの次に多く、年間9千人近くがかかり、約2700人が死亡するとされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月22日 更新)

タグ: がん健康女性医療・話題お産

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