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ジェネリック医薬品 岡山県薬剤師会・中本会長に聞く 患者の負担軽く 品質、供給には不安も

先発品と後発品の患者負担の差(表)

中本行宣会長

「後発医薬品への変更可」の欄が設けられた処方せんのひな型

 「ジェネリック医薬品」という言葉をよく聞くようになった。ある薬の特許が切れた後、別の製薬会社が発売する後発品のことだ。先発品と成分は同じなのに価格が安い。利用を促すため国は四月、処方せんの様式を変更した。医師が認めれば、処方せんを受け取った薬局が患者の合意を得て先発品を後発品に替えられる。岡山県薬剤師会の中本行宣会長に後発品をめぐる現状と課題を聞いた。

 後発品が安い理由について、中本会長は「開発にコストがかからないため」と説明する。

 薬の開発は多数の患者に長期の臨床試験を行い有効性、安全性を確かめるため多大な費用がかかる。できた新薬は二十~二十五年間、特許で守られる。一方、特許切れ後の後発品は承認に臨床試験を省略できる。公定価格(薬価)は当初、先発品の七割に設定され、さらに後から承認される後発品ほど安くなる。

 ただ、薬はよく知られた先発品の商品名で医師が処方することが多く、患者や薬剤師が医師に無断で後発品に替えることはできない。先発品が幅を利かすのは、これが一因だった。今回の様式変更で処方せんの片隅に「後発医薬品への変更可」という欄ができ、医師は署名や押印するだけになった。後発品へ変更を認める意思を表示しやすくすることで、国は医療費抑制につなげたい考えだ。

 「患者の負担を軽くできる」と、中本会長は後発品に対し期待する。「薬剤師の役目はよく効くだけでなく、経済的にも患者に合った薬を提供すること。選択肢が増えるのは助かる」

 ただ、すべての薬に後発品があるわけではない。先発品が発売間もなく特許期間中などの場合だ。また、薬局の在庫にも限りがある。一万三千種類に上る国内の医療用医薬品のうち、「店に置いてあるのは百~千種類程度」。医師が後発品に変更を認めても、薬局に在庫がない場合も考えられる。

 さらに、後発品は品質や供給に不安が残るという。溶け方などが先発品と同等であることは試験で確かめているが、「製造法やコーティングなどが異なれば効き方は違うのではないか」と懸念。安心して使える環境づくりを国や製薬会社に求めている。

 「○○さんの薬をください」―。薬局では最近、ジェネリックを新薬と勘違いし、テレビCMに登場する俳優、歌手の名を挙げる患者もいるという。中本会長は「ジェネリックの名前だけが広まり、どんなものかあまり理解されていない。先発品、後発品のどちらを使うにしても医師や薬剤師とよく相談するのが大切だ」と患者に呼び掛けている。



長期服用ではメリット大きい 後発品で試算

 先発品と後発品で患者負担はどのくらい違うのか。高脂血症と胃かいようでそれぞれ薬を四週間分、院外処方するケースを想定し、岡山市内の薬局で試算してもらった=表参照。

 高脂血症薬のプラバスタチンナトリウム錠(商品名メバロチン錠)は後発品が二十以上あり、薬価も先発品の三~八割と幅広い。胃かいよう薬のランソプラゾールカプセル(同タケプロンカプセル)も薬価が先発品の五~七割の複数の後発品がある。いずれも平均的な価格の商品で試算した。併用する胃薬のレバミピド錠(同ムコスタ錠)は後発品がない。また、後発品を処方してもらうと情報提供料と調剤加算を薬局に支払うことになる。

 先発品と後発品を利用した場合の患者負担(三割)の差は高脂血症が三百八十円、胃かいようは七百二十円だった。

 負担がどの程度軽くなるかは先発品と後発品の薬価差などによりさまざまだが、生活習慣病のように長期服用する場合はメリットが大きそうだ。



 なかもと・ゆきのぶ 明治薬科大卒業後、製薬会社勤務を経て総社市に薬局を開局。岡山県薬剤師会理事、副会長を経て2002年から会長。67歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年05月02日 更新)

タグ: 医療・話題

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