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発達障害児に安心歯科治療を 岡山県、受診環境底上げへ

絵カードを見せながら歯の治療をする真鍋理事長(右)

 岡山県内の歯科医療機関で、発達障害の子どもに配慮した受診環境づくりが進んでいる。言葉で理解しづらい障害特性を踏まえ、県は治療内容を説明する絵カードを作製して普及を図るほか、受診できる医療機関の情報マップも作る予定。ノウハウ不足などから一部にとどまっていた取り組みを広げ、患者が遠方まで行かなくても健診や治療を受けられるようにする。

 「お口開けるよー」「これ、歯を触る道具だからね」

 6月上旬、倉敷市上東のきもと・まなべ歯科クリニック。真鍋るい子理事長(63)が中学3年の男子生徒(総社市)に丁寧に声を掛け、傍らのスタッフが2枚の絵カードを示す。口を開けた子どもと、歯と歯の間に詰まったものを取り除く針のような器具の絵だ。

 男子生徒は知的障害を伴う重度の自閉症がある。4歳ごろからここに通い、今は落ち着いて治療を受けるが、以前は診察室に入るのも難しかったという。

 「発達障害の子どもは何をされに来ているのか分からず、怖くてパニックになりやすい。一つ一つ絵や写真で説明し慣らしていくことが大切」と真鍋理事長。20年前に近くの福祉施設から相談を受け、手探りで治療を始めた。口コミで受診者が増え、福祉施設入所者を含め患者は約100人。今では木曜の午後を障害児者専用に充てている。

 ただ、県健康推進課によると身体障害なども含め障害児者向けに本格的に歯科治療を行っている医療機関はまだ少ない。岡山大病院(岡山市)、旭川荘療育・医療センター(同)、倉敷歯科医師会が運営する倉敷歯科衛生センター(倉敷市)、津山歯科医師会の津山歯科医療センター(津山市)などに限られるという。

 県は2002年に障害者歯科診療協力医制度を立ち上げたが、取り組みにばらつきがあり、底上げを図る必要があると判断した。11年から歯科衛生士に障害特性や対応方法などを教える研修会を開くとともに、昨年3月には32枚セットの絵カード500部を作製。ホームページからダウンロードできるようにして医療機関や保護者らが広く使えるようにした。

 今秋にも約千の歯科医療機関に対し、発達障害の子どもにどの程度まで対応できるかアンケートを実施。家族への保健指導や虫歯の初期治療、本格的な治療―など対応可能なレベルの情報を載せた医療機関のマップを本年度中に作る方針だ。

 県健康推進課は「受け入れてもらえる歯科医療機関が少なく、治療できないまま困っている発達障害の子どもは多い。対応できる医療機関を一つでも増やしていきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月11日 更新)

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