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歯の基細胞 ラットで再生 岡山大大学院・辻極准教授ら成功

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の辻極秀次准教授(口腔(こうくう)病理学)らは、ラットの歯の神経(歯髄)から、歯の主成分・象牙質の基になるシート状の細胞を作り出すことに成功した。虫歯や歯周病などで欠損した歯の再生医療につながる成果という。

 グループは、ラットから抜いた歯の中にある歯髄細胞を取り出して培養。死滅した細胞を除去するなどして自己複製能力を持つ細胞を選んでいく「植え継ぎ」を2年間で80回重ねたところ、カルシウムなどを含むシート状の細胞を形成していったという。

 これをマウスの背中に移植すると、4週間で石灰化。遺伝子分析などの結果、歯表面の硬い層(エナメル質)のすぐ内側にある軟らかい象牙質と同じ性質を持っていることを確認し、象牙質の基となる「象牙芽細胞」の樹立と結論付けた。

 辻極准教授によると、歯随細胞は培養の繰り返しで死滅したり象牙芽細胞に変化する能力が弱まったりしたため、研究を始めた2003年から約30回にわたる挑戦で成功にこぎ着けた。成果は米関連学会誌に掲載された。

 実際のヒトへの治療では不要な親知らずを抜き、歯髄から象牙芽細胞を作製、虫歯治療で欠けた部分などに植え込む方法を想定する。ただ、確実に象牙芽細胞へ変化させる方法は解明できておらず、同細胞の形成過程の分析をさらに進める。

 辻極准教授は「将来的には親知らずではなく、血液中にある関連細胞から象牙芽細胞をつくり出すなど身体的負担のより軽い治療法を開発し、ヒトへの応用を目指す」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月14日 更新)

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