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爪のはなし チクバ外科・胃腸科・肛門科病院医師 木下 真一郎

きのした・しんいちろう 川崎医大付属高、川崎医大卒。川崎医大病院、川崎医大川崎病院などを経て2012年から現職。爪外来を担当している。日本外科学会専門医。

 近年、糖尿病など生活習慣病の増加に伴い、足の病変も増えており、病変に対する治療・予防を総括したフットケアに対する関心が高まっています。しかし、どの科を受診したらよいのか分からず、爪の白いところを全て切ればよいなど、誤った認識をしている方も少なくありません。その結果、深爪をするなどして爪が分厚くなったり、巻き爪になったりして、かえって症状が悪化してしまう方も多くなっています。

爪とは

 足の爪には、さまざまな衝撃から足を守り、微妙なバランスを取ることで、歩いたり走ったりするときの動作を助け、体を支えるという役割があります。

爪切り

 爪の正しい切り方は、スクエアカット法=図1a参照=が最も良いと言われています。スクエアカット法のポイントは、(1)真っすぐ真横に切る(2)切るときに挟む幅を大きく取らない(3)数回に分けて少しずつ切る(4)足の指先まで処置できたらヤスリで削る(5)爪の端のカットは角度をつけない―などであり、ゆっくりと時間をかけて丁寧に行うことが大事です。

 しかし、爪先に白い部分が残っていると、見た目に不衛生であるといった印象や不精であるといった偏見を持っている人は、つい深爪=図1b参照=をしてしまいます。それが原因で巻き爪になってしまうと、爪の端に痛みが生じてバイアス切り=図1c参照=をしてしまい、さらに巻き爪を悪化させてしまう悪循環に陥ります。

爪のトラブル(巻き爪) 

▽原因

 爪が剥がれてしまったり、爪の端を切り過ぎたりしたことで、歩行時に足の指に対して下(地面)から圧力がかかり、指の先端部が膨れ上がってきます。そのため、爪がまっすぐに先端まで伸びることができず、分厚くなる、巻き込む、反り返るなど、さまざまな爪の変化が生じます=図2参照

▽治療

 保存的治療には、痛みの度合いに応じて、いくつかの治療法があります。

 つま先の爪の隙間にコットン(綿)を挿入して圧力を取り除く方法(コットン法)=図3参照=や、陥入部の爪を斜めにカットする方法(部分抜爪(ばっそう)法)は、痛みが軽度の巻き爪に向いています。

 また、保険適応外治療ではありますが、爪の巻きが強い場合は、爪の白い部分に2カ所穴を開けて、弾力性のあるワイヤーを挿入する方法(弾性ワイヤー法)や、個々に合わせて作製したフック状の特殊なワイヤーを、爪の両端に挿入後、中央で巻き上げ徐々に持ち上げる方法(VHO法)といったワイヤー矯正法を施すこともあります。

 根治治療法としては、麻酔処置後、爪縁を根元までカットし爪の根元を特殊な薬剤で焼却処置する方法(フェノール法)があり、これは巻き爪に感染が加わったような爪の方に施す治療法です。

予防法   

 まずは、スクエアカット法などの正しい爪切りを習慣づけましょう。サイズの合わない靴やヒールの高い靴は履かず、紐(ひも)靴やテープのついた靴を踵(かかと)に合わせて正しく履きましょう。その際、靴紐をしっかりと締め(テープを固定し)、先端に少し余裕ができるサイズの靴を選ぶことが大切です。自分の足に合ったインソール(靴底)を作製することも効果的な方法です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月15日 更新)

タグ: 糖尿病

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