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周囲の大人が気を配って 食物アレルギー対策

エピペンを手にアレルギー発症後の早期投与を呼び掛ける金谷医師

 卵や小麦、乳製品といった特定の食品を食べることで発作が起き、命を落とすこともある食物アレルギー。昨年末、東京で小学5年女児が給食後に意識障害を伴うアナフィラキシーショックで死亡した事故を受け、岡山県内の学校でも献立や成分表を綿密に確認するなど対応が進む。アレルギーに詳しい岡山医療センター(岡山市北区田益)小児科の金谷誠久医師(57)に対策のポイントを聞いた。

 ―食物アレルギーとは。

 そばやピーナツなど特定の食材を口にすると、急激な血圧低下に加え、皮膚のかゆみをもたらす物質「ヒスタミン」が体内で増加。じんましんや吐き気、息苦しさなどの症状が出る。最悪の場合、肺や肝臓など複数の臓器が機能不全に陥るショック状態となり、死亡することもある。

 ―アレルギー体質を知る方法や治療法は。

 医療機関で血液を調べれば分かるが、母親の免疫に守られている生後6カ月までは正確なデータが得られず、注意が必要だ。これといった治療法がなく完治は難しいが、医師の指導に基づき、薬の服用と合わせて少量の原因食材を数年間食べ続ければ、耐性を高められる。

 ―発作時はどのように対処すべきか。

 「エピペン」というアドレナリンの自己注射薬の投与が有効だ。心臓からの血液量を増やして血管を収縮させることで、急激な血圧の低下が防げる。使用は早ければ早いほど効果が高いが、発症後30分以内に投与しなければならない。ただ、薬価は1本約1万円と高額な上、使用期限は1年間。経済的な負担の軽減に向け、行政は補助を検討すべきだ。

 ―東京での事故は、女児にアレルギーのある乳製品入り食材を担任が誤って渡したことが原因とされる。同種事故を防ぐ対策は。

 調理された食べ物に原因食材が含まれているかどうか、子どもには判別できない。周囲の大人が気を配る必要がある。原因食材を取り除く対策はもちろんだが、おかわりなどの際も注意を怠ってはならない。女児はエピペンを持っていたが、使用が遅れ、命を落としてしまった。患者と長い時間接する人たちに、緊急時の処置法を周知しておくことも重要だ。

 【アナフィラキシー】 じんましんや嘔吐(おうと)、息苦しさ、めまいなど短時間で激しい症状が現れるアレルギー反応。血圧低下、意識障害など重篤な全身症状を呈する場合はアナフィラキシーショックと呼ばれ、命に危険が及ぶとされる。食物のほかハチの毒などで発症することもある。岡山県教委の調査によると、県内の公立小中高校で発症の恐れのある児童生徒は3月時点で119人に上った。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年08月17日 更新)

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