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(68) 膝の痛み 岡山済生会総合病院整形外科 林 正典 診療部長(55) ヒアルロン酸注射で改善 関節鏡手術も

「かくなら冷や汗でなくいい汗を」がモットーの林診療部長。手術前のイメージトレーニングを大切にする

 岡山済生会総合病院のベテラン医師・林正典が整形外科を専門としたのは、岡山大での医学生時代、ラグビーに夢中だったことが大きく影響している。

 タックルやスクラムで選手が激しくぶつかり、格闘技に例えられる競技。骨折やねんざに泣かされた林にとって、多くのスポーツ選手が受診する整形外科は身近な存在だった。

 「卒業した後、整形外科医になれば、専門知識を趣味のスポーツでも生かせるだろう」

 現在、岡山県内の愛好者チームでプレーしながら、同県ラグビーフットボール協会の医務委員長として選手たちを支えている。医学生当時の理想を実現させながら、林が本業で注力しているのは膝の痛みの治療だ。

 痛みの中でも、変形性膝関節症は国内の推定患者数が約2500万人に上り、高齢の女性に多いという。

 膝関節では、二つの骨(太ももの大腿(だいたい)骨、すねの脛(けい)骨)が接している。関節が滑らかに動くのは、二つの骨の接合部にある軟骨や関節液のおかげだが、年齢を重ねて軟骨がすり減ると、逆に動きが悪くなったり、痛みが出たりする。

 治療法として林がまず選ぶのはヒアルロン酸注射。「患者の9割で痛みが和らぐなどよく効き、副作用の心配も少ない」と説明する。

 肌の潤い成分としても知られるヒアルロン酸は、関節液に含まれている。変形性膝関節症が進行するとヒアルロン酸の濃度が下がるため、週1回計5回、膝関節に注射して濃度を高めることで症状の改善を図る。

 歩くのが難しいほどに症状が悪化している場合は、人工関節手術を行う。摩耗した軟骨を金属に置き換え、さらに金属同士が直接触れるのを防ぐためにポリエチレンを挟み込む。林は2006年から力を入れており、年間60〜70件を手がけている。

 所要時間は1時間半から2時間。材質の向上で耐用年数は20年超に延び、動かせる角度も以前は90度前後だったのが130前後と大きくなった。膝への負担が大きい正座は控えてもらう必要があるが、林は「痛みも小さくなり歩行も可能。いすやテーブルなどを使う洋式の生活なら支障なく過ごすことができる」と言う。

 大腿骨と脛骨の間にある半月板や、その二つの骨を結ぶ靱帯(じんたい)の損傷も痛みのもと。いずれの損傷も激しい運動で大きな力が膝に加わった時に起きやすいが、林は患部を直接映す関節鏡による手術に取り組んでいる。

 「付ける傷は大きくなく、患者さんの体の負担も小さい」。膝に1センチの穴を3〜4カ所開けて、関節鏡や手術器具を挿入。半月板損傷の場合、裂けた部分を縫い合わせたり、でこぼこになった部分をなめらかにしたりする。靱帯損傷であれば、患者自身の腱(けん)などを使って、切れた部分を修復する。

 林は関節鏡手術を、現在の職場に着任した1995年に本格スタート。半月板損傷を中心に年間約150件をこなす。

 人と接するのが好きなのは、少年時代から変わらない。それだけに「膝の痛みがなくなり笑顔が戻った患者さんの姿を見るのが一番の喜び」。林はこれからも、臨床というフィールドに立ち続けるつもりだ。(敬称略)

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 はやし・まさみち 徳島県立城南高、岡山大医学部卒。同大病院、JA府中総合病院(現府中市民病院)などを経て1995年、岡山済生会総合病院に着任。2008年から現職。井上一・元岡山大病院長や守都義明・済生会吉備病院上席診療部長らに師事した。岡山県内のラグビーチーム「桃惑クラブ」に所属し、ポジションはバックス。酒はかなりいける口。

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 外来 林診療部長の専門外来(膝・スポーツ)は、月曜日午前午後と水曜日午後、木曜日午前。月〜金曜日の午後3〜5時に、整形外科外来受付(086―252―2215)で予約することが望ましい。

岡山済生会総合病院

岡山市北区伊福町1の17の18
電話 086―252―2211
メール koekiku@okayamasaiseikai.or.jp
ホームページ http://www.okayamasaiseikai.or.jp/
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月16日 更新)

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