文字 

(3)心臓病センター榊原病院 ハイブリッド室で手術時間短縮

診療棟南側の芝生庭園には散策路が設けられ、緑の潤いを楽しむことができる

明るい室内に最新型機器を備えたリハビリテーションセンター

(上段左から)榊原敬理事長、岡﨑悟院長、吉鷹秀範上席副院長(下段左から)坂口太一副院長、山本桂三副院長

 ホテルのロビーに足を踏み入れたようだ。

 戦後岡山を代表する写真家・故緑川洋一氏の色彩鮮やかな作品が出迎える1階エントランスホールには、白を基調とした広々とした空間の中にコンビニとレストランが入居。総合受付がある2階も、落とし加減の照明と家具調のいすがマッチして、落ち着いた雰囲気を醸しだしている。

 「ホテルが持つような癒やしと安らぎの空間を提供することで、お見えになる方の満足度をより高めたい」。榊原敬理事長が新しい病院への思いを話す。

 国内初の心臓手術を手がけた伝統を持つ心臓病センター榊原病院。開院80年の節目の2012年9月、岡山市中心部から現在地に移転し、同時に系列病院も統合した。

 新病院は、診療棟(鉄筋コンクリート7階延べ約3万1100平方メートル)と、リハビリ棟(同5階延べ7300平方メートル)の2棟で、病床数計297。敷地の南側には、芝生庭園を整備し、1周約200メートルの散策路を歩きながら、緑の潤いを楽しむことができる。

 「高齢化の進行に伴い、心臓病などの循環器疾患を持つ患者は今後増えるだろう」と岡﨑悟院長。このため、移転を機に、診療体制を格段に強化した。

 移転前は3室だった手術室を倍以上の7室に、20床だった集中治療室(ICU)は30床にそれぞれ増やした。ヘリポートを新設したことで、岡山県北部や四国など遠隔地の患者を迅速に受け入れられるようになった。

 診療体制で目を引くのは、手術室のうち2室設けた「ハイブリッド手術室」。従来よりも精度が高い3次元画像を見ることができるシステムを備えており、患部の位置を一層正確に把握することが可能になった。

 その結果、手術のスピードアップが実現した。榊原病院は年間300例の大動脈瘤りゅう手術を手がけているが、半数は破裂を防ぐステントグラフト(ばね状の人工血管)留置術。「以前は平均約2時間かかったが、約30分短縮できた」と吉鷹秀範上席副院長は説明する。

 移転に伴う手術機器の一新と充実は、体に付ける傷が小さくて済む低侵襲の「ポートアクセス手術」の増加にもつながっている。

 心臓弁の修復・人工弁置換手術や冠動脈バイパス手術が対象で、手がける坂口太一副院長は「年約50件だったが、今年は100件以上に達するペースで行っている」と言う。

 心臓病手術後の再発を防ぐには、リハビリが重要となる。新病院では、旧病院の1・7倍に当たる約750平方メートルのセンターを整備し、歩行練習装置や自転車型トレーニング機器などの装置を最新型に更新し、温水プール(25メートル×3コース)も備えた。

 一般利用が可能で、心電図や血液検査を通して健康状態の定期的チェックも行う運動スペース「メディカルフィットネス」も開設。山本桂三副院長は「病気を予防するには、医学的なサポートに基づく毎日の健康づくりが大切」と強調する。

心臓病センター榊原病院(電話086―225―7111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月04日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ