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(8)変形性膝関節症 人工関節にする前に 初期、中期の人はMRI検査を 天和会松田病院整形外科医長 松田和実

まつだ・かずみ 倉敷青陵高、川崎医大卒。1994年1月から天和会松田病院に勤務、現在整形外科医長。日本整形外科学会整形外科専門医。

上から正常な関節軟骨、傷んだ半月板、むき出しになった軟骨下骨

 高齢化が進み、整形外科においてロコモティブシンドローム(以下ロコモ)が徐々に一般社会にも浸透してきました。

 このロコモを来す三大整形外科疾患としては(1)骨粗鬆(こつそしょう)症(2)変形性脊椎症(3)変形性膝関節症―が挙げられます。

 この中でも変形性膝関節症は、比較的早期に自覚症状が現れ、自己診断(膝の痛みや違和感)がつきやすいものです。そのため受診される方も多く、治療も画一的なものとなっていることも否めません。

 まず初期には、投薬・リハビリ・日常生活の指導(和式生活の回避等)で経過を見ましょうと言われることが多いのではないでしょうか。この場合、レントゲンでもわずかな変性変化と臨床上でもはっきりした所見のない場合です。

 次に軟骨の摩耗が明らかで関節水腫やO脚変形がみられる場合には、先の治療に加えてサポーターや足底装具の作製とともにヒアルロン酸の関節注射が行われます。かつての治療であればこの後は、脛骨(けいこつ)の骨切り術を行うか人工関節置換術を行うのが通常でした。

 ここで皆さんに覚えておいていただきたいのは、軟骨の摩耗が著しく変形も著明な末期関節症の方は別にして、初期と中期の方にはぜひMRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けていただきたいのです。そうすれば骨切りや人工関節といった大手術を受ける前に関節鏡手術によって膝の寿命が延長できるかもしれません。

 実際、変形性膝関節症の患者さんに関節鏡を行ってみると、最も多い所見は放置された半月板損傷により関節の軟骨が摩耗し軟骨下骨がむき出しになった状態です。想像してみてください。正常な関節軟骨はきれいな陶器の表面のように滑らかですが、そこに砂や小石(損傷した半月板)があれば当然表面は傷つき、すり減ってしまいます。たとえすり減った後でも引っかかっている小石や砂を取り除いて悪いはずはありません。

 またこの関節鏡を行う時、欠損している軟骨部を直径1・5~2・0ミリのドリルで数カ所穴をあけ骨髄内から出血させ、その部分に繊維軟骨という軟骨様の組織が再生してくるのを待つ方法もあります。ただし効果判定には6週~3カ月かかることがあります。

 ところで、最近TVなどで自家軟骨培養移植が取り上げられていますが、この適応は外傷性の軟骨欠損で、年齢も40歳代以下で欠損範囲が限定され、3カ月以上の体重負荷制限が必要になるため体力のある方にしか適応はありません。

 この外傷性軟骨損傷(骨壊死)も最近増加の傾向にあります。レントゲンで疑わしい場合はMRIで早期診断が可能です。

 ですから、変形性膝関節症と診断され初期治療で改善がみられない場合は一度MRIの適応を主治医の先生によく相談されることをお勧めします。特に半月板損傷(変性および外傷を含む)が主体の場合1週間ほどの入院で関節鏡処置を行えば、まだ使える自分の膝を大手術することなく、長く使えることも少なくありません。

 自己判断せずに主治医の先生に積極的に自分の膝の状態を説明してもらいましょう。

(日本整形外科学会整形外科専門医)

◇天和会松田病院(電話086―422―3550)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月18日 更新)

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